技術管理者とは、建設リサイクル法第31条に基づき、解体工事業を登録した事業者が施工する解体工事について、施工の技術上の管理をつかさどる者をいいます。具体的には、現場における作業の安全確保、分別解体等の適正な実施、再資源化の推進など、解体工事の品質と適法性を担保する役割を担います。
技術管理者は、解体工事業登録を行った事業者が施工するすべての解体工事現場に配置しなければなりません。建設業許可における専任技術者が営業所に常駐するのに対し、技術管理者は工事現場ごとに配置する点が大きな違いです。なお、同一の技術管理者が複数現場を兼任することは、適正な管理が可能な範囲であれば認められる場合がありますが、各都道府県の運用に従う必要があります。
技術管理者になるためには、大きく分けて「資格による要件」と「実務経験による要件」のいずれかを満たす必要があります(解体工事業者登録省令第7条)。資格を保有している場合は実務経験が不要、または短縮されるケースが多く、資格がない場合は一定年数以上の実務経験が必要となります。
学歴及び資格の有無により、必要となる実務経験年数が異なります。下表に整理いたします。
| 学歴 | 実務経験年数 | 実務経験年数+講習受講 |
|---|---|---|
| 大学・高等専門学校 | 2年以上 | 1年以上 |
| 高等学校・中等教育学校 | 4年以上 | 3年以上 |
| 上記以外(学歴不問・指定外学科) | 8年以上 | 7年以上 |
学歴では、土木工学科、建築学科、都市工学科、衛生工学科、交通工学科等の指定学科を履修して卒業しているとが必要です。
一定の国家資格を保有している方は、実務経験を問わず技術管理者となることができます。これは、当該資格の試験範囲に解体工事の施工管理に関する知識が含まれているためです。
下表は、技術管理者として認められる主な資格を整理したものです。
| 資格区分 | 資格名 |
|---|---|
| 技術士 | 建設部門(2次試験合格者) |
| 建設機械施工管理技士 | 1級、または2級(第1種と第2種) |
| 土木施工管理技士 | 1級、または2級(土木) |
| 建築施工管理技士 | 1級、または2級(建築・躯体) |
| 建築士 | 1級建築士・2級建築士 |
| 技能検定 | とび・とび工(1級、または2級合格後1年以上の実務経験) |
| その他 | 解体工事施工技士 |
特に解体工事施工技士は、公益社団法人全国解体工事業団体連合会が実施する試験で、解体工事業登録制度のために創設された資格であり、技術管理者要件として広く活用されております。
ここでいう実務経験とは、解体工事の施工に関する技術上の経験を指します。単なる雑務や事務作業は含まれませんが、現場での直接的な施工経験や、その技術習得のための見習い期間は含まれます。具体的には、施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、現場監督などを含む技術的な業務経験が該当します。下請として従事した期間も適切な登録・許可業者のもとでの技術的経験であれば算入可能です。
実務経験を証明するためには、過去の勤務先からの実務経験証明書の提出が必要です。証明書には、従事した工事の内容、期間、立場などを具体的に記載しなければなりません。証明者である過去の勤務先が廃業している場合などは、注文書、契約書、請求書、源泉徴収票など客観的な資料による補完が求められることがあります。
複数の事業者での経験は通算が可能ですが、期間の重複は認められません。また、解体工事と直接関係のない工事(純粋な新築工事のみなど)の経験は原則として算入できない点に注意が必要です。
学歴に応じた実務経験年数を1年短縮できる制度として、国土交通大臣が指定する講習があります。代表的なものとして、公益社団法人全国解体工事業団体連合会が実施する「解体工事施工技術講習」が挙げられます。
たとえば、土木工学等の指定学科を履修していない方でも、当該講習を修了することで必要実務経験年数が8年から7年に1年短縮されます。資格取得が難しい方にとって、要件を満たすための有効な選択肢となります。なお、講習修了の効果は永続的に有効ですので、早期の受講が推奨されます。
個人事業主や小規模事業者の場合、事業主自身が技術管理者を兼ねることが一般的です。法人の場合も、役員や従業員が技術管理者となることに制限はありませんが、適正な現場管理が可能であることが大前提となります。
複数の解体工事現場を一人の技術管理者が掛け持ちすることは、現場間の距離、工事規模、工程などを総合的に勘案し、実質的な技術管理が可能な範囲であれば認められます。ただし、各都道府県によって運用が異なりますので、事前に管轄部署への確認が望ましいといえます。
解体工事業登録における技術管理者と、建設業許可(解体工事業)における主任技術者・監理技術者は、混同されがちですが性質が異なります。下表に整理いたします。
| 項目 | 技術管理者(登録) | 主任技術者(許可) |
|---|---|---|
| 根拠法令 | 建設リサイクル法 | 建設業法 |
| 対象工事金額 | 500万円未満(税込) | 500万円以上含む全工事 |
| 配置単位 | 工事現場ごと | 工事現場ごと |
| 要件 | 資格または実務経験 | 資格または実務経験(建設業法基準) |
建設業許可(解体工事業)を取得すれば、解体工事業登録は不要となり、主任技術者を配置することになります。請負金額が500万円以上の解体工事を継続的に受注する見込みがある場合は、登録ではなく許可取得の検討が現実的です。
技術管理者の要件を満たしていないにもかかわらず、実務経験を水増しして申請した場合、登録の取消しや罰則の対象となります(建設リサイクル法第35条第1項)。建設リサイクル法では、虚偽申請に対して50万円以下の罰金が規定されており、信用失墜による事業継続への影響も甚大です(建設リサイクル法第48条第2号)。
技術管理者として登録した者が退職等により不在となった場合、速やかに後任を選任し、変更届出を行う必要があります(建設リサイクル法第31条)。技術管理者が不在の状態で解体工事を施工することは法令違反となりますので、人材の確保と継続性の確保は経営上の重要課題といえます。
解体工事業登録における技術管理者は、資格保有者もしくは所定の実務経験を有する者のいずれかであることが求められます。資格による要件は明確で証明も容易ですが、実務経験による要件は証明書類の準備に時間を要するケースが多く見受けられます。また、国土交通大臣指定講習の活用により、要件充足の道筋が広がる点も押さえておきたいところです。
事業の継続性を確保するためには、複数の技術管理者候補を社内で育成しておくこと、解体工事施工技士などの資格取得を計画的に進めることが有効です。要件の判断や書類準備に不安がある場合は、許認可に精通した行政書士へ早めにご相談いただくことで、確実かつ円滑な登録手続きが実現できます。