結論として、技術管理者が他社と兼任することは原則として認められません。これは、技術管理者が解体工事業登録を行った事業者の現場における施工の技術上の管理を担う立場であり、責任の所在を明確にする必要があるためです。複数の事業者で技術管理者を兼任することは、適切な施工管理が困難となるおそれがあり、建設リサイクル法の趣旨に反すると解されています。
技術管理者の選任義務は、建設リサイクル法第31条に規定されており、その基準は解体工事業に係る登録等に関する省令第7条に定められています。これらの法令上、技術管理者は登録事業者に専属的に所属し、当該事業者の解体工事の施工管理を行うことが前提とされています。
技術管理者として登録された者が、別会社の常勤役員や常勤従業員を兼任している場合、当該技術管理者としての職責を適切に果たせないと判断されるため、原則として認められません。これは、登録事業者における技術管理者は、当該事業者に恒常的に所属していることが求められるためです。
下表に、典型的な問題となる兼任パターンを整理いたします。
| パターン | 状況 | 兼任可否 |
|---|---|---|
| A社の技術管理者が、B社(別法人)の技術管理者も兼任 | 他社との二重選任 | × 不可 |
| A社の技術管理者が、B社の常勤役員を兼任 | 他社で常勤勤務 | × 原則不可 |
| A社の技術管理者が、B社の建設業許可上の専任技術者を兼任 | 他社の専任要件抵触 | × 不可 |
| A社の技術管理者が、自身の個人事業として別途解体業を営業 | 個人と法人の二重活動 | × 原則不可 |
このように、他社や別事業との兼任は、適正な施工管理の確保という観点から問題視されます。
同一の登録事業者内において、一人の技術管理者が複数の解体工事現場を兼任することは、適正な技術管理が可能な範囲であれば認められる場合があります。技術管理者は工事現場ごとに配置義務がありますが、建設業法の主任技術者と異なり、すべての現場に常駐する義務までは課されていません。
下表は、複数現場兼任の可否判断において考慮される主な要素です。
| 判断要素 | 内容 |
|---|---|
| 現場間の距離 | 移動時間が短く、両現場の管理が現実的に可能か |
| 工事規模 | 各現場の工事規模が小さく、管理負担が重くないか |
| 工程の重なり | 同時並行で進む工程が、管理上競合しないか |
| 現場代理人の配置 | 各現場に現場代理人等の補助者が配置されているか |
| 自治体の運用基準 | 各都道府県における兼任の取扱い基準 |
なお、複数現場の兼任については、各都道府県によって運用に幅がありますので、事前に管轄部署への確認が望ましい対応となります。
解体工事業登録の技術管理者と、建設業許可における専任技術者は、いずれも技術系の要件として混同されがちですが、その専任性の取扱いには明確な違いがあります。下表に整理いたします。
| 項目 | 技術管理者(登録) | 専任技術者(許可) |
|---|---|---|
| 配置単位 | 工事現場ごと | 営業所ごと |
| 常駐義務 | 現場常駐は不要 | 営業所への常勤専任が必要 |
| 他社兼任 | 原則不可 | 原則不可(厳格) |
| 自社内兼任 | 複数現場で兼任可(条件付) | 営業所間の兼任は不可 |
| 根拠法令 | 建設リサイクル法第31条 | 建設業法第7条第2号・第15条第2号 |
専任技術者は営業所への常勤性が厳格に求められる一方、技術管理者は現場の技術管理者という性格上、現場常駐までは要求されない点が特徴です。ただし、いずれも他社との兼任は認められないという点では共通しています。
同一会社内において、技術管理者と現場代理人または建設業許可上の主任技術者を兼任することは可能です。実態としても、小規模な解体工事業者では、事業主や限られた従業員が複数の役職を兼ねるケースが一般的に見られます。
下表に、社内での役職兼任の可否を整理いたします。
| 兼任パターン | 可否 | 備考 |
|---|---|---|
| 技術管理者 + 現場代理人(同一現場) | ◯ 可 | 一般的な運用 |
| 技術管理者 + 主任技術者(建設業許可保有時) | ◯ 可 | 同一会社内であれば可能 |
| 技術管理者 + 経営業務管理責任者 | ◯ 可 | 法人の役員等の場合 |
| 技術管理者 + 自社の他現場の技術管理者 | △ 条件付 | 適正管理可能な範囲で |
このように、同一会社内での役職兼任については幅広く認められていますが、他社との兼任は厳格に制限されるという基本構造があります。
技術管理者として登録された者が、実態として他社で常勤しているなど、適正な選任とはいえない状態が判明した場合、登録の取消しまたは業務改善命令などの行政処分の対象となるおそれがあります。これは、登録時の申請内容に虚偽があったと判断されるためです(建設リサイクル法第35条)。
建設リサイクル法では、虚偽の登録申請に対して1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が規定されています。さらに、登録取消しを受けた事業者は、一定期間(通常2年間)再登録ができないなどの不利益も生じます。社会的信用への影響も大きいため、選任時には実態に即した適正な人選が不可欠です(建設リサイクル法第24条、第48条)。
技術管理者については、国土交通省のパブリックコメント回答において常勤であることは求められていないことが明示されており、登録申請時に常勤性を証する書面の添付も不要とされています。もっとも、技術管理者が登録事業者の解体工事の施工管理を実質的に担う立場であることを踏まえると、雇用契約書や業務委託契約書などにより、当該事業者との関係性を明確にしておくことが望ましいといえます。法人の役員が技術管理者となる場合は、登記簿謄本での役員就任の事実が、関係性を裏付ける資料として活用できます。
下表は、関連性のある事業者間での兼任の取扱いを整理したものです。
| 関係性 | 兼任の可否 | 留意点 |
|---|---|---|
| 親会社・子会社間 | × 別法人のため不可 | 法人格が異なれば兼任不可 |
| グループ会社間 | × 別法人のため不可 | 同一資本でも別法人扱い |
| 個人事業主 + 別法人 | × 不可 | 個人と法人は別主体 |
| 同一法人の複数営業所 | ◯ 可 | 同一法人内であれば可能 |
たとえ親子会社の関係であっても、法人格が異なれば別事業者として扱われるため、兼任は認められない点に注意が必要です。
他社との兼任に頼ることなく技術管理者を確保するためには、社内人材の計画的な育成が最も確実な方法となります。実務経験を積んだ従業員が解体工事施工技術講習を受講することや、解体工事施工技士などの資格取得を支援することが有効です。
技術管理者の不在は事業継続に直結するため、可能であれば複数の有資格者または要件充足者を社内に確保しておくことが理想的です。退職や交代時にも速やかに後任を選任でき、変更届出への対応もスムーズに進められます。
技術管理者の他社との兼任は、建設リサイクル法の趣旨および実務運用上、原則として認められません。これは、登録事業者に対する責任の所在を明確化し、適正な施工管理を確保するためです。一方、同一会社内での複数現場の兼任については、現場間の距離や工事規模、管理体制などを総合的に勘案し、適正な技術管理が可能な範囲で認められる余地があります。
兼任の可否判断は各都道府県の運用によっても差があるため、事前確認が望ましいといえます。技術管理者が不在となる事態を避けるためにも、社内人材の育成と複数候補者の確保が経営上重要となります。技術管理者の選任や兼任の判断にお悩みの場合は、許認可に精通した行政書士へお気軽にご相談ください。