解体工事業と産廃収集運搬業の関係について解説!
解体工事と産業廃棄物収集運搬業は別制度で、建設業許可があっても運搬には別途許可が必要な場合があります。元請・下請で異なる許可要否や、無許可営業の重いリスク、実務上の判断基準を解説しています。

解体工事業と産廃収集運搬業の関係について解説!

1|産業廃棄物収集運搬業許可の基本的な考え方

産業廃棄物処理法の規制:

 産業廃棄物の収集運搬業を営もうとする者は、廃棄物処理法第14条第1項の規定により、運搬する区域を管轄する都道府県知事(または政令市長)の許可を受なければなりません。許可は積込み地と荷下ろし地の両方を管轄する自治体の許可がそれぞれ必要となります。


解体工事で発生する産業廃棄物:

 解体工事では多種多様な産業廃棄物が発生します。代表的なものとして次のような廃棄物が挙げられます。

主な廃棄物の種類 具体例
がれき類  コンクリート破片・アスファルト・レンガ
木くず  木造家屋の解体木材・建具
金属くず  鉄筋・サッシ・配管
ガラスくず・陶磁器くず  窓ガラス・タイル・便器
廃プラスチック類  配管・断熱材・内装材
特別管理産業廃棄物  飛散性アスベスト・PCB含有機器

2|建設業許可と産業廃棄物収集運搬業許可の関係

両許可は別個の制度:

 建設業許可産廃収集運搬業許可は、根拠法令も所管も異なる別個の制度です。建設業許可(解体工事業)を取得していても、産業廃棄物の収集運搬を業として行う場合は別途許可が必要となります。両制度の概要を整理すると次のとおりです。

区分 建設業許可(解体工事業) 産業廃棄物収集運搬業許可
根拠法令 建設業法 廃棄物処理法
所管 国土交通省 環境省
対象行為 解体工事の請負 産業廃棄物の収集・運搬
許可単位 業種ごと 都道府県・政令市ごと
有効期間 5年 5年


許可取得の独立性:

 解体工事業の建設業許可を有していても、産業廃棄物の収集運搬を業として行うには、別途都道府県知事または政令市長の許可が必要となります。逆に、産廃収集運搬業許可を有していても、500万円以上の解体工事を請け負うには建設業許可が必要です。

3|元請業者と下請業者で異なる取扱い

排出事業者責任の原則:

 廃棄物処理法では、建設工事に伴って生じた廃棄物については、原則として元請業者が排出事業者となり、廃棄物の処理責任を負うものとされています(廃棄物処理法第21条の3第1項)。元請業者が自ら排出した廃棄物を自ら運搬する場合は、収集運搬業の許可は不要です(自社運搬)


元請・下請による許可要否:

 元請・下請の立場による許可要否を整理すると、次のようになります。

立場 自社の現場の廃棄物を運搬 他社の現場の廃棄物を運搬
元請業者  不要(自社運搬) 必要
下請業者  原則必要 必要


下請業者の例外規定:

 下請業者であっても、廃棄物処理法第21条の3第3項に定める一定の要件を満たす場合に限り、例外的に許可なしで運搬できる場合があります。具体的には、請負代金500万円以下の維持修繕工事等(解体・新築・増築工事を除く)または災害復旧工事であること、元請業者と下請負人との間に下請負人が自ら運搬する旨の書面による合意があること、運搬車両に関係書類を備え付けていることなど、複数の要件を全て満たす必要があります。なお、解体工事はこの例外規定の対象から除外されているため、解体工事の下請業者が廃棄物を運搬する場合には原則として収集運搬業許可が必要となります。

4|許可が必要となる典型的なケース

他社現場からの廃棄物運搬:

 自社が下請として施工した解体工事の廃棄物を運搬する場合、または他の解体業者の現場から廃棄物を運搬する場合は、産廃収集運搬業許可が必須となります。「自社で施工しているのだから自社運搬で良い」という誤解から無許可営業に至るケースが見られますが、元請でない限り原則として許可が必要です。


複数都道府県をまたぐ運搬:

 産廃収集運搬業許可は、積込み地(廃棄物を積む場所)荷下ろし地(廃棄物を下ろす中間処理施設等)の両方の自治体の許可が必要です。たとえば、鹿児島県の現場から宮崎県の処分場へ運搬する場合は、鹿児島県知事と宮崎県知事の両方の許可が必要となります。中継地点の都道府県の許可は不要です。


5|許可取得の主な要件

人的要件:

 許可申請者(法人の場合は役員等)が廃棄物処理法第14条第5項の欠格要件に該当しないこと、また、産業廃棄物の収集運搬に関する<u>講習会</u>修了証(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター主催)を取得していることが必要です。講習会は2日間(約12時間)の講義と修了試験により構成されています。


施設・財政的要件:

 運搬車両、運搬容器、駐車場(車庫)など、収集運搬業を的確に遂行するための施設を有していること、また、事業を継続的に遂行できる経理的基礎を有していることが求められます。直前3期分の財務諸表により審査されますので、債務超過の状態にある場合は注意が必要です。


6|無許可営業のリスク

罰則の重大性:

 無許可で産業廃棄物の収集運搬業を営んだ場合、廃棄物処理法第25条第1項第1号の規定により5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれの併科に処せられる可能性があります。法人の場合は両罰規定により3億円以下の罰金が科される可能性もあり、極めて重い罰則となっています。


建設業許可への影響:

 廃棄物処理法違反により罰金以上の刑に処せられた場合、建設業法第8条欠格要件に該当し、建設業許可の取消事由となります。一度取消処分を受けると5年間は建設業許可を再取得できなくなりますので、解体業者にとって致命的な影響を及ぼします。

まとめ:適切な許可取得でコンプライアンス経営を

 解体工事に伴う産業廃棄物の運搬については、元請業者が自社現場の廃棄物を運搬する場合を除き、原則として産廃収集運搬業許可が必要となります。建設業許可産廃収集運搬業許可は別個の制度であり、解体工事業の建設業許可を有しているだけでは廃棄物の収集運搬を業として行うことはできません。
 特に下請業者として解体工事を請け負う場合、自社の施工現場であっても発生した産業廃棄物を運搬するには許可が必要となります。例外規定の適用は厳格な要件を満たす必要があるため、安易な自己判断は危険です。
 また、許可は積込み地と荷下ろし地の双方の自治体の許可が必要となるため、複数都道府県にまたがって運搬する場合は事前の許可取得計画が重要です。無許可営業に対する罰則は5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科と非常に重く、建設業許可の取消事由ともなり得ます。
 事業展開のエリアや受注形態(元請・下請)を踏まえ、必要な許可を正確に把握したうえで取得することが、コンプライアンス経営の基盤となります。許可要否の判断や申請手続きにお悩みの場合は、許認可に精通した行政書士へのご相談をおすすめいたします。