専任技術者と経管との兼務ついて解説!
建設業許可で必要となる専任技術者と経営業務の管理責任者は、一定の要件を満たせば同一人物による兼務が可能です。兼務の条件や認められないケース、実務上の注意点を解説しています。

専任技術者と経管との兼務ついて解説!

専任技術者と経営業務の管理責任者の兼務について

 建設業許可を取得する際、経営業務の管理責任者(経管)と専任技術者(専技)という2つの重要な人的要件を満たす必要があります。特に一人親方や小規模事業者の方から、「一人で両方の役割を兼ねることができるのか」という質問を数多くいただきます。本稿では、経管と専技の兼務の可否、その要件、実務上の注意点について詳しく解説していきます。


結論:兼務は可能である

 結論から申し上げますと、専任技術者と経営業務の管理責任者を同一人物が兼ねることは可能です。建設業法上、両者の兼務を禁止する規定はなく、むしろ一人親方や小規模な建設業者においては、同一人物が両方の役割を担うことが一般的です。


 ただし、兼務するためには、その人物が経管の要件と専技の要件の両方を満たしている必要があります。また、営業所に常勤していることが大前提となります。経管と専技はいずれも「常勤」であることが求められるため、兼務する場合も当然に常勤性が必要です。


経管と専技の役割と要件の違い

 経管と専技は、それぞれ異なる役割を持ち、求められる要件も異なります。以下の表で両者を比較します。

項目 経営業務の管理責任者(経管) 専任技術者(専技)

主な役割

建設業の経営面の統括管理 建設業の技術面の統括管理

求められる能力

経営管理能力、営業判断力 技術力、施工管理能力

主な要件

建設業の経営経験5年以上 実務経験10年以上または資格

証明方法

確定申告書、役員経験証明 契約書、請求書、資格証明書

配置先

営業所 営業所

常勤要件

必須 必須

兼務の可否

専技との兼務可能 経管との兼務可能

 この表から分かるように、経管は経営面、専技は技術面という異なる領域を担当しますが、同一人物が両方の能力を持っていれば兼務できるという考え方です。

兼務が認められる理由

 建設業法が経管と専技の兼務を認めている理由は、小規模事業者の実態に配慮しているためです。特に一人親方や従業員が少ない事業者の場合、経営者自身が高い技術力を持ち、現場での施工管理も行いながら経営判断も下すというのが実態です。


 このような事業者に対して、経営担当者と技術担当者を別々に配置することを義務付けると、許可取得が事実上不可能になってしまいます。そのため、建設業法は一人で両方の要件を満たしていれば兼務を認めるという現実的な制度設計となっています。


兼務する場合の具体的なパターン

 経管と専技を兼務する場合の具体的なパターンを、事業形態別に整理します。

事業形態 兼務者の地位 経管要件の充足方法 専技要件の充足方法 典型例

個人事業

個人事業主本人 個人事業主として5年の経営経験 10年の実務経験または資格 一人親方

株式会社

代表取締役 役員として5年の経営経験 10年の実務経験または資格 小規模建設会社の社長

株式会社

取締役(代表権なし) 役員として5年の経営経験 10年の実務経験または資格 技術担当取締役

合同会社

代表社員 役員相当として5年の経営経験 10年の実務経験または資格 合同会社の代表

 最も一般的なのは、個人事業主本人が経管と専技を兼務するケースです。個人事業主として5年以上建設業を営んできた経験で経管要件を満たし、その間の実務経験または保有資格で専技要件を満たします。


 法人の場合は、代表取締役または取締役が兼務するケースが一般的です。役員として5年以上の経営経験があり、かつ技術的な要件も満たしている役員が、経管と専技を兼務します。

兼務に必要な経験年数のパターン

 経管と専技を兼務する場合、それぞれの要件を満たすために必要な経験年数は、資格や学歴によって異なります。以下の表は主なパターンを示しています。

パターン 経管要件 専技要件 合計必要経験 備考

資格なし・学歴なし

経営経験5年 実務経験10年 10年 最も一般的、経営と実務が重複可

国家資格保有

経営経験5年 資格で充足 5年 経営経験のみでOK

大学・高専の指定学科卒

経営経験5年 実務経験3年 5年 経営と実務が重複可

高校の指定学科卒

経営経験5年 実務経験5年 5年 経営と実務が重複可

経営6年+他業種

経営経験6年(他業種含む) 実務経験10年 10年以上 複雑なケース

 資格も学歴もない場合、独立前の職人としての経験5年と、独立後の個人事業主としての経験5年を合わせて10年あれば、両方の要件を満たすことができます。独立後の5年間は、経営経験と実務経験の両方としてカウントされます。


 1級または2級の施工管理技士などの国家資格を持っている場合、専技要件は資格で充足できるため、経営経験5年があれば両方の要件を満たせます。これは最も早く許可を取得できるパターンです。

兼務が認められないケース

 経管と専技の兼務は原則として認められますが、以下のようなケースでは兼務が認められません。

認められないケース 理由 対処方法 具体例

要件を満たしていない

経管または専技の要件未達 要件を満たすまで待つか、別の人を配置 経営経験3年しかない

常勤性がない

他社で常勤している 他社を退職するか、別の人を配置 他社の正社員のまま

複数営業所の兼務

2つ以上の営業所で兼務 各営業所に専任者を配置 A営業所とB営業所の兼務

非常勤役員

法人の非常勤役員 常勤役員になる 月1回の取締役会出席のみ

 特に注意が必要なのは常勤性です。経管も専技も「常勤」であることが要件ですので、他社で社会保険に加入して常勤している場合は、自社の経管・専技にはなれません。

複数業種の許可と専技の関係

 建設業許可には29の業種があり、複数の業種で許可を取得することができます。複数業種の許可を取得する場合の専技の配置について、以下の表で整理します。

状況 専技の配置方法 必要な資格・経験 具体例

1業種のみ

1名の専技で可 その業種の資格または実務経験 内装仕上工事業のみ

複数業種(1人で対応可能)

1名の専技が複数業種を担当 複数業種に対応する資格または実務経験 1級建築施工管理技士(複数業種対応可)

複数業種(1人では対応不可)

業種ごとに専技を配置 各業種の資格または実務経験 内装と電気で別々の専技

 一人の専技が複数の業種を担当することも可能です。例えば、1級建築施工管理技士の資格があれば、建築一式工事、大工工事、屋根工事、タイル・れんが・ブロック工事など複数の業種の専技になることができます。


 この場合、その専技が経管も兼務していれば、一人で経管および複数業種の専技を担当することになります。これも建設業法上、問題なく認められています。

常勤性の証明方法

 経管と専技を兼務する場合、その人物が営業所に常勤していることを証明する必要があります。常勤性の証明方法は以下の表の通りです。

証明方法 対象者 証明書類 証明内容

社会保険被保険者証

法人の役員・従業員 健康保険証のコピー 社会保険加入による常勤性

住民税特別徴収税額通知書

法人の役員・従業員 市区町村発行の通知書 給与所得者としての常勤性

確定申告書

個人事業主本人 確定申告書の控え 個人事業の継続性

履歴事項全部証明書

法人の役員 登記簿謄本 役員就任の事実

 法人の場合、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が常勤性の証明として最も重視されます。役員であっても、報酬を得て常勤している場合は社会保険に加入する義務があります。


 個人事業の場合、個人事業主本人は社会保険の加入義務がないため、確定申告書や営業所の実態で常勤性を証明します。

兼務のメリットとデメリット

 経管と専技を同一人物が兼務することのメリットとデメリットを整理します。

項目 メリット デメリット

人件費

1名分の人件費で済む 特になし

意思決定

経営と技術の判断が一体化、迅速 一人に負担が集中

責任の所在

責任の所在が明確 一人に負担が集中

許可要件

要件を満たす人材が1名で済む その人が辞めると許可維持不可

組織運営

小規模事業者に適した体制 事業拡大時は分離が必要

 最大のメリットは、人的要件を満たす人材が1名で済むという点です。特に一人親方や小規模事業者にとって、経営経験と技術経験の両方を持つ人材を2名確保するのは困難ですので、兼務が認められることは非常に重要です。


 一方、デメリットとしては、その人物が退職や病気などで不在になった場合、経管と専技の両方が欠けてしまうという点があります。この場合、許可要件を満たさなくなるため、速やかに後任を配置する必要があります。

事業規模拡大時の考慮事項

 事業が拡大し、従業員が増えてきた場合、経管と専技を分離することを検討する場合もあります。以下の表は、事業規模と人的配置の関係を示しています。

事業規模 推奨体制 理由 具体的配置例

一人親方

経管・専技兼務 人材確保が困難、コスト面で有利 本人が全てを担当

従業員3~5名

経管・専技兼務 まだ兼務で対応可能 社長が経管・専技兼務

従業員10名以上

分離を検討 役割分担で効率化 社長が経管、技術者が専技

複数営業所

営業所ごとに配置 各営業所に専任者が必要 本社:社長(経管・専技)、支店:支店長(専技)

 事業規模が大きくなり、複数の営業所を持つようになった場合、各営業所に専技を配置する必要があります。ただし、経管は主たる営業所に1名いれば足りますので、支店には専技のみを配置することになります。

兼務に関する実務上の注意点

 経管と専技を兼務する際の実務上の注意点を以下にまとめます。


 第一に、両方の要件を確実に満たしていることを証明する必要があります。経営経験の証明書類(確定申告書や役員経験証明)と、技術経験の証明書類(契約書、請求書、資格証明書)の両方を漏れなく準備する必要があります。


 第二に、常勤性を明確に証明する必要があります。特に法人の場合、社会保険への加入が重要な証明となりますので、許可申請前に適切に加入しておく必要があります。


 第三に、兼務者が交代する場合の手続きに注意が必要です。経管や専技が交代する場合は、変更届を提出する必要があります。経管と専技を兼務している人物が交代する場合、両方の変更届が必要となります。


まとめ

 専任技術者と経営業務の管理責任者を同一人物が兼ねることは可能です。建設業法上、兼務を禁止する規定はなく、特に一人親方や小規模事業者においては、同一人物が両方の役割を担うことが一般的な形態となっています。


 兼務するためには、その人物が経管の要件(経営経験5年以上)専技の要件(実務経験10年以上または資格)の両方を満たしている必要があります。資格や学歴がある場合は、より短い期間で両方の要件を満たすことができます。


 また、営業所に常勤していることが大前提となります。法人の場合は社会保険への加入、個人事業の場合は確定申告書などで常勤性を証明します。経管と専技の兼務は小規模事業者にとって非常に重要な制度ですので、両方の要件を満たせるよう計画的に経験を積むことをお勧めします。建設業許可の人的要件について不安がある場合は、建設業許可に精通した行政書士に相談することで、スムーズな許可取得につながるでしょう。