業種ごとに専任技術者が必要かどうか解説!
複数業種の建設業許可を取得する場合でも、要件を満たせば1人の専任技術者が複数業種を担当できます。配置の考え方や資格ごとの対応範囲、業種追加時の注意点を解説しています。

業種ごとに専任技術者が必要かどうか解説!

複数業種の建設業許可における専任技術者の配置について

 建設業許可には29の業種があり、事業者は自社が行う工事に応じて複数の業種で許可を取得することができます。事業の拡大や元請からの要請により、既存の許可業種に加えて新たな業種の許可を取得したいという相談を数多くいただきます。その際、「複数の業種で許可を取る場合、それぞれの業種ごとに専任技術者を配置しなければならないのか」という疑問が必ず生じます。本稿では、複数業種の許可における専任技術者の配置要件について詳しく解説していきます。


結論:1人の専任技術者が複数業種を担当できる

 結論から申し上げますと、1人の専任技術者が複数業種の要件を満たしていれば、その人が複数業種を担当することができます。業種ごとに別々の専任技術者を配置する必要はありません。これは建設業法の考え方として、専任技術者は営業所ごとに配置すれば良く、その専任技術者が複数業種に対応する資格や経験を持っていれば、複数業種を担当できるとされているためです。


 例えば、1級建築施工管理技士の資格を持っている人は、建築一式工事、大工工事、屋根工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、内装仕上工事など複数の業種の専任技術者になることができます。この場合、1人で6つの業種の専任技術者を兼務することが可能です。


専任技術者が複数業種を担当できる仕組み

 専任技術者は営業所ごとに配置されるものであり、業種ごとに配置されるものではありません。以下の表は、専任技術者の配置の考え方を整理したものです。

配置の考え方 内容 必要人数 具体例

営業所単位

1つの営業所に1人以上の専技を配置 営業所数分 本店に1人、支店に1人

業種単位ではない

業種ごとに専技を配置する必要はない 1人で複数業種可 1人で内装工事と防水工事を担当

資格・経験による

専技が持つ資格や経験で担当業種が決まる 資格次第 1級建築施工管理技士なら複数業種可

 このように、専任技術者は営業所に配置されるものであり、その専任技術者がどの業種を担当できるかは、その人が持っている資格や実務経験によって決まります。

資格による複数業種の対応

 国家資格を持っている場合、その資格の種類によって担当できる業種が決まります。以下の表は、主要な資格と対応可能な業種を示しています。

資格名 対応可能な主な業種 業種数 特徴

1級建築施工管理技士
 

建築一式、大工、左官、とび・土光・コンクリート、石、屋根、タイル・れんが・ブロック、鋼構造物、鉄筋、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕上、熱絶縁、建具、解体 17業種 最も多くの業種に対応

1級土木施工管理技士
 

土木一式、とび・土工・コンクリート、石、鋼構造物、舗装、しゅんせつ、塗装、水道施設、解体 9業種 土木系の幅広い業種に対応

1級電気工事施工管理技士
 

電気工事 1業種 電気工事専門

1級管工事施工管理技士
 

管工事 1業種 管工事専門

2級建築施工管理技士(建築)
 

建築一式、解体 2業種 建築系の主要業種

2級建築施工管理技士(仕上げ)
 

大工、左官、石、屋根、タイル、板金、ガラス、塗装、防水、内装、熱絶縁、建具 12業種 仕上げ系業種

1級建築士
 

建築一式、大工、屋根、タイル、鋼構造物、内装仕上 6業種 設計と施工の両方に対応

1級電気工事施工管理技士
 

電気工事 1業種 電気専門

 この表から分かるように、1級建築施工管理技士や1級土木施工管理技士は複数の業種に対応できる非常に有用な資格です。一人親方が事業拡大を考える場合、これらの資格を取得することで、1人で複数業種の専任技術者になることができます。

複数業種を取得する際の申請パターン

 複数業種の建設業許可を取得する方法には、いくつかのパターンがあります。

申請パターン タイミング 申請手数料 メリット デメリット

同時に複数業種取得(新規)

初回申請時 知事許可9万円 手続き1回、費用が安い 初回から準備が複雑

業種追加

既存許可取得後 知事許可5万円 段階的に拡大できる 追加費用が発生

更新時に業種追加

5年ごとの更新時 更新+業種追加分 更新と同時に手続き可 タイミングが限定的

 最も経済的なのは、初回申請時に必要な業種を全て取得する方法です。新規申請の手数料は業種数に関わらず一律(知事許可9万円)ですので、複数業種を同時に申請しても追加費用はかかりません。


 一方、既に許可を取得している状態から新たな業種を追加する業種追加申請の場合、追加手数料として5万円が必要となります。ただし、事業の実態に合わせて段階的に業種を増やせるというメリットがあります。

業種の組み合わせパターン

 実務上、よく組み合わせて取得される業種のパターンを以下にまとめます。

主要業種 組み合わせる業種 理由 必要な資格・経験

建築一式工事

大工工事、内装仕上工事 建築工事の主要な工程 1級建築施工管理技士で対応可

土木一式工事

とび・土工、舗装工事 土木工事の主要な工程 1級土木施工管理技士で対応可

内装仕上工事

大工工事、建具工事 内装工事で必要な関連業種 2級建築施工管理技士(仕上げ)で一部対応可

電気工事

電気通信工事 電気関連の工事 それぞれ別の資格または経験が必要

管工事

水道施設工事 配管関連の工事 それぞれ別の資格または経験が必要

 関連性の高い業種を組み合わせることで、実務経験の証明がしやすく、また実際の受注にも対応しやすくなります。

複数営業所がある場合の専技配置

 事業が拡大して複数の営業所を持つ場合、各営業所にそれぞれ専任技術者を配置する必要があります。

営業所構成 専技の配置 人数 注意点
本店のみ 本店に専技1人 1人 最もシンプル
本店+支店1つ 本店に専技1人、支店に専技1人 2人 各営業所に常勤必要
本店+支店2つ 本店に専技1人、支店Aに専技1人、支店Bに専技1人 3人 人材確保が課題

 重要なのは、同一人物が複数の営業所の専任技術者を兼務することはできないという点です。「専任」とは、その営業所に常勤して専ら職務に従事することを意味するため、複数の営業所を掛け持ちすることは認められません。


 ただし、各営業所の専任技術者が、それぞれ複数業種を担当することは可能です。例えば、本店の専任技術者が内装仕上工事と大工工事を担当し、支店の専任技術者が電気工事を担当するといった形です。

業種追加の際の専技要件

 既に建設業許可を持っている事業者が新たな業種を追加する場合、追加する業種の専任技術者を確保する必要があります。

追加パターン 専技の対応 必要な手続き 難易度

既存の専技が新業種にも対応可

現在の専技で対応 追加資格・経験の証明 容易

既存の専技では対応不可

新たに専技を配置 新専技の要件証明 やや困難

現専技が資格取得

資格取得後に業種追加 資格証明書の提出 中長期的対応

 最も簡単なのは、現在配置している専任技術者が新しい業種にも対応できる資格や経験を持っている場合です。この場合、人員を増やすことなく業種追加ができます。


 例えば、現在内装仕上工事の許可を持っており、実務経験で専任技術者要件を満たしている場合、同じ専任技術者が大工工事の実務経験も10年以上あれば、その証明を追加することで大工工事の業種追加が可能です。

専技の交代と複数業種

 専任技術者が退職などで交代する場合、後任の専任技術者も全ての許可業種に対応できる必要があります。

状況 対応方法 注意点 リスク

後任が全業種に対応可

そのまま交代 変更届の提出 なし

後任が一部業種のみ対応可

対応できない業種を廃業 業種の廃業届と専技変更届 事業縮小

後任が確保できない

複数人で分担 実質的には困難 許可維持困難

 複数業種の許可を持っている場合、専任技術者の交代時に全ての業種に対応できる人材を確保することが重要です。対応できない業種がある場合は、その業種の廃業届を提出する必要があります。

まとめ

 複数の業種で建設業許可を取得する場合、それぞれの業種ごとに専任技術者を配置する必要はありません。1人の専任技術者が複数業種の要件を満たしていれば、その人が複数業種を担当することができます。


 特に1級建築施工管理技士や1級土木施工管理技士などの国家資格を持っている場合、1人で複数の業種に対応できるため、非常に効率的です。資格がない場合でも、複数業種の実務経験があれば、同じ期間を重複してカウントすることで複数業種の要件を満たすことができます。


 新規申請時に複数業種を同時に取得すれば、申請手数料は1回分で済むため経済的です。ただし、本当に必要な業種に絞って取得することも重要です。専任技術者は営業所ごとに配置されるものであり、業種ごとではないという基本原則を理解しておくことが、複数業種の許可取得をスムーズに進めるポイントです。複数業種の取得を検討する際は、建設業許可に精通した行政書士に相談することをお勧めします。