過去の自己破産、許可要件を満たすか解説!
過去に自己破産の経歴があっても、復権を得ていれば建設業許可の取得は可能です。欠格要件との関係や復権の意味、必要書類、法人化する場合の注意点までわかりやすく解説しています。

過去の自己破産、許可要件を満たすか解説!

過去に自己破産した場合の建設業許可取得の可否について

 建設業許可の取得を検討されている方の中には、過去に経済的な困難に直面し、自己破産の手続きを経験された方もいらっしゃいます。「自己破産の経歴があると建設業許可は取得できないのではないか」という不安を抱える方から、数多くの相談をいただきます。本稿では、過去に自己破産した場合の建設業許可取得の可否、復権の概念、具体的な手続きについて詳しく解説していきます。


結論:復権を得ていれば取得できる

 結論から申し上げますと、過去に自己破産をしていても、復権を得ていれば建設業許可を取得することができます。建設業法における欠格要件には「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」という規定がありますが、復権を得ていれば欠格要件には該当しないため、許可取得に支障はありません。


 重要なのは「復権を得ているかどうか」という点です。自己破産をしただけでは永久に建設業許可が取得できないわけではなく、破産手続きが終了して復権を得れば、通常通り許可を申請できるようになります。


建設業法における欠格要件と破産

 建設業許可を取得するためには、法律で定められた欠格要件に該当しないことが必要です。破産に関する欠格要件を含め、主な欠格要件を以下の表にまとめます。

欠格要件 内容 対象者 許可への影響

破産手続開始決定(復権なし)
 

破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 個人・法人役員 復権まで許可不可

許可の取消し
 

不正手段で許可取得等により取消しから5年未経過 個人・法人役員 5年間許可不可

拘禁刑以上の刑
 

拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年未経過 個人・法人役員 5年間許可不可

建設業法違反
 

建設業法違反等で罰金刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年未経過 個人・法人役員 5年間許可不可

暴力団員等
 

暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年未経過 個人・法人役員 該当期間は許可不可

 この表から分かるように、破産に関する欠格要件は「復権を得ない者」に限定されています。つまり、復権を得ていれば欠格要件には該当しないということです。他の欠格要件と比較しても、破産は復権によって欠格事由が解消される点が特徴的です。

復権とは何か

 復権とは、破産手続きによって制限されていた資格や権利が回復することを意味します。破産手続開始の決定を受けると、一定の資格や職業に就くことが制限されますが、復権を得ることでこれらの制限が解除されます。


 復権には、大きく分けて当然復権申立てによる復権の2種類があります。以下の表で両者を比較します。

復権の種類 内容 条件 手続き 取得時期

当然復権(免責許可確定)

免責許可決定が確定した場合 免責許可を受ける 不要(自動的) 免責許可確定時

当然復権(同時廃止)

同時廃止事件で免責確定 同時廃止+免責許可 不要(自動的) 免責許可確定時

当然復権(異時廃止)

配当等により破産手続終了 手続き終了 不要(自動的) 手続き終了時

申立てによる復権

免責不許可の場合等 特別な事情 裁判所に申立て 裁判所の決定時

 最も一般的なのは、免責許可決定が確定することによる当然復権です。個人が自己破産を申し立て、裁判所から免責許可の決定を受け、その決定が確定した時点で、特別な手続きをすることなく自動的に復権を得ます。

破産手続きの流れと復権のタイミング

 個人の自己破産手続きにおいて、復権を得るまでの一般的な流れを以下の表で示します。

段階 手続き 所要期間 復権の状態 建設業許可申請

①破産申立て

裁判所に破産申立て - 復権なし 申請不可

②破産手続開始決定

裁判所が破産手続開始を決定 申立てから1~2ヶ月 復権なし 申請不可

③同時廃止または管財事件

財産状況により手続き決定 数ヶ月~1年 復権なし 申請不可

④免責許可決定

裁判所が免責を許可 破産開始から3~6ヶ月 まだ復権なし 申請不可

⑤免責許可確定

免責許可決定が確定(官報公告後2週間) 免責許可から2週間 復権取得 申請可能

 免責許可決定が確定した時点で当然復権を得るため、この時点から建設業許可の申請が可能になります。一般的に、破産申立てから免責許可確定までは、同時廃止事件で3~6ヶ月程度、管財事件で6ヶ月~1年程度かかります。

復権を証明する書類

 建設業許可申請において、過去に破産歴がある場合、復権を得ていることを証明する書類が必要となる場合があります。以下の表は、復権証明の方法をまとめたものです。

証明方法 書類 取得先 証明内容 費用

身分証明書

身分証明書(破産の有無記載) 本籍地の市区町村役場 現在破産者でないことの証明 数百円

登記されていないことの証明書

登記されていないことの証明書 法務局 後見登記等がないことの証明 数百円

免責許可決定書

裁判所が発行する免責許可決定書 破産手続きをした裁判所 免責が許可されたことの証明 通常は手続き時に受領

破産手続終結決定書

裁判所が発行する破産手続終結決定書 破産手続きをした裁判所 破産手続きが終了したことの証明 通常は手続き時に受領

 建設業許可申請では、本籍地の市区町村役場で取得できる「身分証明書」を提出します。この身分証明書には、現在破産者であるかどうかが記載されており、「破産者でない」または「該当事項なし」と記載されていれば、復権を得ていることの証明となります。


 注意点として、ここでいう「身分証明書」は、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分を証明するものとは異なり、市区町村役場が発行する公的な証明書です。本籍地の役場でのみ取得でき、住所地の役場では取得できません。

個人事業主と法人の違い

 自己破産の影響は、個人事業主として許可を取得する場合と、法人として許可を取得する場合で異なります。

事業形態 破産の影響 対象者 注意点

個人事業主

本人が破産者であれば許可不可(復権まで) 事業主本人 復権後は通常通り申請可

株式会社・合同会社

役員が破産者であれば許可不可(復権まで) 全ての役員 1人でも復権していない役員がいれば不可

株式会社・合同会社(新設)

過去に破産した人が役員でも復権していれば可 設立時の役員 復権証明が必要

 法人で建設業許可を取得する場合、全ての役員が欠格要件に該当しないことが必要です。したがって、役員の中に復権を得ていない破産者がいる場合、法人として建設業許可を取得することはできません。


 一方、過去に破産したが既に復権を得ている人が役員になっている法人であれば、問題なく建設業許可を取得できます。復権を得ていれば欠格要件には該当しないためです。

法人成りする場合の注意点

 過去に個人事業主として自己破産した方が、復権後に法人を設立して建設業許可を取得するケースも多くあります。この場合の注意点を以下の表にまとめます。

状況 対応 必要書類 注意点

個人破産→復権→法人設立→許可申請

通常通り申請可能 身分証明書(復権証明) 特に問題なし

個人破産→復権→個人で許可取得済→法人成り

法人で新規申請 身分証明書(復権証明) 個人経験は活用可

法人破産→復権→別法人設立→許可申請

通常通り申請可能 身分証明書(復権証明) 前法人の破産は別人格

 重要なポイントは、法人の破産と個人の破産は別物という点です。過去に経営していた法人が破産した場合、その法人の代表者が個人として破産していなければ、新たに法人を設立して建設業許可を申請する際に破産歴は問題になりません(ただし、前法人の許可取消し歴等は別途確認が必要です)。

復権を得ていない場合の対処方法

 万が一、破産手続き中でまだ復権を得ていない場合、以下の対処方法があります。

状況 対処方法 所要期間 実現可能性

免責許可決定待ち

免責許可確定まで待つ 数週間~数ヶ月 高い

破産手続き中

手続き完了まで待つ 数ヶ月~1年 高い

免責不許可

申立てによる復権を検討 個別に異なる 状況による

他の役員が破産者

その役員を退任させる 即日~数週間 可能(ただし経営上の判断必要)

 免責許可決定が近い場合は、確定を待ってから建設業許可を申請するのが最も確実です。急いで申請する必要がある場合でも、復権を得ていない状態では申請しても不許可となってしまいます。


 法人の場合で、特定の役員だけが復権を得ていない場合は、その役員に退任してもらい、役員の変更登記を行った上で建設業許可を申請するという方法もあります。ただし、これは経営上の重要な判断となりますので、慎重に検討する必要があります。

破産歴と信用情報の関係

 建設業許可の取得においては、復権を得ていれば破産歴は問題になりませんが、事業運営における信用情報には影響が残る可能性があります。

項目 建設業許可への影響 事業運営への影響 期間

建設業許可の取得

復権後は影響なし - -

信用情報(個人)

影響なし 金融機関からの借入困難 破産から5~10年

取引先の審査

影響なし 取引審査で影響の可能性 状況による

保証人

影響なし 保証人になることが困難 破産から5~10年

 建設業許可そのものの取得には復権後は影響ありませんが、金融機関からの融資を受ける際や、取引先の与信審査などでは、信用情報に破産歴が残っている期間(一般的に5~10年)は影響が出る可能性があります。


 ただし、これは建設業許可制度とは別の問題であり、建設業許可自体は復権していれば問題なく取得できるという点を理解しておくことが重要です。

財産的基礎との関係

 自己破産から復権を得て建設業許可を申請する場合、財産的基礎の要件を満たすことも重要です。

証明方法 破産後の実現可能性 注意点 推奨度

自己資本500万円以上

時間がかかる 事業再建に時間が必要 中長期的には最適

残高証明書500万円以上

資金調達できれば可 親族等からの援助が必要な場合も 実現可能性あり

融資証明書

困難 破産後は金融機関の融資困難 低い

 自己破産直後は、財産が清算されているため、自己資本や預金残高での証明が困難なケースが多いです。親族等から一時的に資金を借りて残高証明書を取得する方法が現実的です。


 事業を再建し、数年かけて自己資本を蓄積していくことで、より安定的な財産的基礎の証明ができるようになります。

実務上のアドバイス

 過去に自己破産した方が建設業許可を取得する際の実務的なアドバイスを以下にまとめます。


 第一に、復権を確実に確認することです。免責許可決定書を保管しているか、身分証明書を取得して「破産者でない」ことを確認します。書類が見つからない場合は、破産手続きを行った裁判所に問い合わせることで、記録を確認できます。


 第二に、申請のタイミングを適切に判断することです。復権を得ていても、財産的基礎が整っていない、実務経験の証明書類が揃っていないなどの状態では許可を取得できません。復権後、事業を立て直し、必要な要件を全て満たしてから申請します。


 第三に、過去の経緯を正直に説明する姿勢が重要です。建設業許可申請において、破産歴を隠すことはできません。身分証明書で明らかになりますし、虚偽の申告は誠実性の要件に抵触する可能性があります。復権を得ていれば問題ないという前提で、正直に申告します。


まとめ

 過去に自己破産をしていても、復権を得ていれば建設業許可を取得することができます。建設業法の欠格要件は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」であり、復権を得ていれば欠格要件には該当しないためです。


 最も一般的な復権の方法は、免責許可決定が確定することによる当然復権です。免責許可が確定すれば、特別な手続きをすることなく自動的に復権を得ます。復権の証明は、本籍地の市区町村役場で取得できる身分証明書で行います。


 法人の場合、全ての役員が欠格要件に該当しないことが必要ですので、役員の中に復権を得ていない破産者がいる場合は許可を取得できません。過去に破産したが既に復権を得ている人が役員になっている法人であれば、問題なく建設業許可を取得できます。


 建設業許可の取得には、復権以外にも経営業務の管理責任者、専任技術者、財産的基礎などの要件があります。特に破産直後は財産的基礎の証明が課題となる場合がありますので、計画的に準備を進めることが重要です。建設業許可の取得に不安がある場合は、建設業許可に精通した行政書士に相談することをお勧めします。