結論からお伝えすると、建設業許可を取得した直後であっても、経審の申請自体は法律上可能です。建設業法には「許可取得後〇か月経過しなければ申請できない」という待機期間の規定はありません。許可を取得し、必要書類が揃っていれば、原則として申請の受付は行われます。
しかし、実務上は許可取得直後に経審を申請するケースはほとんどありません。その理由は、経審の審査において直近の決算内容が評価の中心となるためです。許可取得直後は決算期を迎えていないため、審査に必要な財務諸表が存在しない、あるいは内容が不十分となりやすく、結果として低い評定値しか得られない可能性が高くなります。
経審を申請するためには、まず決算変更届(事業年度終了届)を許可行政庁に提出していることが前提となります。決算変更届とは、事業年度が終了するたびに財務諸表や工事施工金額などの変更内容を届け出る手続きです。この届出が完了していなければ、経審の申請を受け付けてもらえません。
経審の申請に先立ち、登録経営状況分析機関への申請も別途必要です。経審の審査項目のひとつである「経営状況(Y点)」は、国土交通大臣の登録を受けた民間の分析機関が算出します。分析結果通知書を取得してから、初めて許可行政庁への経審申請が可能となります。つまり、経審の申請には「決算変更届の提出」と「経営状況分析の完了」という2つの前提手続きが必要です。
建設業を新規に開始し、第1期決算が終了していない場合でも経審の申請は可能です。この場合、法人であれば設立日、個人であれば創業の日が審査基準日となります。ただし、決算期を迎えていないため提出できる財務諸表の内容はごく短期間のものとなり、実績がほとんど反映されない状態での審査となります。
経審の評価項目のひとつである「完成工事高(X1点)」は、直前2年または3年の年間平均完成工事高をもとに算出されます。許可取得直後は施工実績が少ないため、この数値が低くなり、結果として総合評定値(P点)が低水準にとどまります。低いP点のまま入札参加資格を申請しても、参加できる工事の規模や発注機関が限られてしまいます。
経審の審査基準日は、申請する日の直前の事業年度終了日(決算日)に自動的に決まる仕組みです。そのため、申請時にすでに新しい審査基準日(新たな決算日)を迎えている場合は、従前の審査基準日では審査を受けることができません。つまり、第1期決算前に経審を受けた場合でも、第1期決算が終了した時点で新たな審査基準日が生じるため、改めて経審を受審し直す必要があります。結果として、許可取得直後に受審しても、決算終了後に再受審が必要となるケースがほとんどであり、実務上のメリットはほとんどありません。
経審では複数の審査項目が総合的に評価され、最終的に総合評定値(P点)が算出されます。各項目の内容を理解しておくことで、許可取得後のどの時点で申請するのが最も有利かを判断できます。
以下のテーブルで、主な審査項目と評価内容を整理します。
| 審査項目 | 記号 | 主な評価内容 |
|---|---|---|
| 工事種類別完成工事高 | X1 | 直近2年または3年の平均完成工事高 |
| 自己資本額・利払前税引前償却前利益 | X2 | 自己資本の充実度・収益力 |
| 経営状況 | Y | 負債抵抗力・収益性・効率性・財務健全性・絶対的力量 |
| 技術職員数・元請完成工事高 | Z | 技術者の数・元請工事の実績 |
| その他の審査項目 | W | 労働福祉・建設業の営業継続・防災活動・法令遵守等 |
上記の中でも、許可取得直後に特に低くなりやすいのがX1(完成工事高)とY(経営状況)です。これらはいずれも一定期間の事業実績を前提とする項目であるため、実績が積み上がるにつれて評定値も改善していきます。
実務上の一般的な目安として、<b>許可取得後に第1期決算を完了してから経審を申請することが推奨されます。第1期決算が完了することで、財務諸表が整い、完成工事高の実績も一定程度反映されるため、意味のある評定値を得ることができます。第1期決算前に申請することは制度上可能ですが、実績がほとんど反映されないうえ、決算終了後に改めて受審し直す必要が生じるため、実務上のメリットはほとんどありません。
さらに理想をいえば、2期分の完成工事高の実績が蓄積された状態で受審するほうが、より高いP点を期待できます。完成工事高(X1)の評価では直前2年平均が用いられるため、2期分の実績が揃った状態のほうが評定値の安定性が増します。公共工事への参入を本格的に計画しているのであれば、許可取得から2期分の決算完了を目安に準備を進めることをお勧めします。
経審の結果通知書の有効期間は審査基準日から1年7か月と定められています。この有効期間が切れ目なく継続できるよう、毎年事業年度終了(決算終了)後4か月以内に決算変更届を提出し、定期的に経審を受審し続けることが実務上の大原則です。「いつ初めて申請するか」と同様に、経審切れを生じさせないスケジュール管理を早い段階から習慣化しておくことが重要です。
以下のテーブルで、許可取得から経審申請までの標準的なスケジュール例を示します。
| 時期 | 実施内容 |
|---|---|
| 許可取得 | 建設業許可の取得・営業開始 |
| 許可取得後4か月以内(第1期) | 第1期決算変更届の提出 |
| 事業年度終了後4か月以内(第2期) | 第2期決算変更届の提出 |
| 第2期決算完了後 | 登録経営状況分析機関へ申請(Y点取得) |
| 分析結果通知書受領後 | 許可行政庁へ経審申請 |
| 経審結果通知書受領後 | 各発注機関へ入札参加資格申請 |
入札参加資格の申請には各発注機関ごとの受付期間が定められており、その時期を逃すと次の受付まで待たなければならないケースがあります。経審の結果通知書を取得するタイミングが入札参加資格の申請期限に間に合うよう、逆算してスケジュールを組むことが非常に重要です。
以下のテーブルで、許可取得直後に経審を申請した場合と、一定期間経過後に申請した場合のメリット・デメリットを比較します。
| 申請タイミング | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 許可取得直後 | 早期に入札参加資格を取得できる可能性がある | P点が低くなりやすく、参加できる工事が限られる |
| 1期決算完了後 | 財務諸表が整い、一定の評定値が得られる | 申請まで約1年程度かかる |
| 2期決算完了後 | より安定した高いP点が期待できる | 申請まで約2年程度かかる |
どのタイミングで申請するかは、事業の状況や公共工事参入の緊急性によって異なります。「早く入札に参加したい」という場合でも、低いP点での参入はかえって受注機会を狭めることになりかねません。焦らず実績を積み上げてから申請することが、長期的には得策といえます。
建設業許可を取得した直後でも経審の申請自体は可能ですが、審査に必要な財務諸表や完成工事高の実績が不十分なため、低い評定値しか得られないリスクがあります。現実的には、最低1期分・できれば2期分の決算を完了してから申請することが、より高いP点につながり、公共工事への参入を有利に進めることができます。申請のタイミングや手続きの流れについては、専門の行政書士へお気軽にご相談ください。