P点を効率よく引き上げるためには、まず各審査項目のウエイト(重み)を正確に理解することが不可欠です。ウエイトが高い項目ほどP点全体への影響が大きく、同じ努力でもより大きな効果が期待できます。下表のとおり、X1(完成工事高)とZ(技術力)がそれぞれ25%と最も高く、この2項目だけでP点全体の50%を占めています。
| 記号 | 審査項目 | ウエイト |
|---|---|---|
| X1 | 工事種類別年間平均完成工事高 | 25% |
| X2 | 自己資本額・利払前税引前償却前利益 | 15% |
| Y | 経営状況 | 20% |
| Z | 技術力 | 25% |
| W | 社会性等 | 15% |
P点向上の施策には、短期間で実現できるものと、売上拡大や財務改善のように数年単位の取り組みが必要なものがあります。限られた時間とコストの中で効率よくP点を引き上げるためには、まず即効性が高く取り組みやすい施策から着手し、中長期的な施策と並行して進めることが現実的な戦略です。
Z点はウエイト25%とP点への影響が最も大きい項目のひとつであり、かつ資格取得や講習受講という比較的取り組みやすい方法でスコアを引き上げられる点が特徴です。完成工事高の増加には時間がかかりますが、Z点は資格のアップグレードや講習受講によって比較的短期間で改善できるため、一人親方が最初に注力すべき項目といえます。
技術職員1人あたりの配点は保有資格によって大きく異なります。現在2級資格(2点)しか保有していない場合、1級資格を取得するだけで5点に跳ね上がり、さらに監理技術者資格者証を取得して講習を受講することで最高の6点評価を得ることができます。
| 区分 | 点数 | 主な資格・要件 |
|---|---|---|
| ①1級監理受講者 | 6点 | 1級技術者のうち、監理技術者資格者証を保有し、かつ審査基準日前5年以内に講習を受講した者。 |
| ②1級技術者 | 5点 | 1級国家資格者(1級施工管理技士、1級建築士など)で、上記①以外の者。 |
| ③ 監理技術者補佐 | 4点 | 主任技術者の資格を有し、1級技士補である者、または監理技術者資格を有する者。 |
| ④ 基幹技能者・レベル4 | 3点 | 登録基幹技能者講習を修了した者、または能力評価基準レベル4の建設技能者。 |
| ⑤2級技術者・レベル3 | 2点 | 2級国家資格者(2級施工管理技士、2級建築士など)、または能力評価基準レベル3の建設技能者。 |
| ⑥ その他技術者 | 1点 | 10年の実務経験者や、特定の資格(2級技士補など)を有する者。 |
W点はウエイト15%ですが、社会保険への加入・建退共への加入・防災協定の締結など、比較的短期間で対応できる項目が多く含まれています。特に未加入の保険がある場合は減点対象となるため、まず減点をなくすことが最初のステップです。その後、加点項目に順次対応することで着実にW点を積み上げることができます。
W点における主な評価項目とその概要は以下のとおりです。減点項目への対応を最優先とし、その後に加点項目へ取り組む順序が効率的です。
| 項目 | 内容 | 評価の種類 |
|---|---|---|
| 雇用保険未加入 | 未加入の場合に減点 | 減点 |
| 健康保険未加入 | 未加入の場合に減点 | 減点 |
| 厚生年金保険未加入 | 未加入の場合に減点 | 減点 |
| 建退共への加入 | 加入で加点 | 加点 |
| 退職一時金・企業年金制度の導入 | 導入で加点 | 加点 |
| 法定外労働災害補償制度への加入 | 加入で加点 | 加点 |
| 防災協定の締結 | 締結で加点(20点) | 加点 |
| 建設業経理士の配置 | 資格保有者数に応じて加点 | 加点 |
| ISO・エコアクション21の取得 | 取得で加点 | 加点 |
X1点はウエイト25%と最大級の影響力を持つ項目ですが、完成工事高を実際に増やすには継続的な営業活動と施工実績の積み上げが必要であり、短期間での劇的な改善は容易ではありません。しかし中長期的な視点では、完成工事高の拡大がP点向上の最も根本的な手段であることは間違いなく、並行して取り組むべき重要課題です。
完成工事高そのものを増やすことが難しい時期でも、2年平均・3年平均の選択を適切に行うことで評点を最大化できます。直近の実績が高ければ2年平均、低ければ3年平均を選ぶことで、同じ実績であっても評点に差が生じます。毎年の申請前に両パターンを試算し、有利な方を選択することが重要です。
X2点はウエイト15%であり、自己資本額(純資産)と利払前税引前償却前利益(営業利益+減価償却実施額)の2期平均をもとに算出されます。自己資本額は毎年の利益を内部留保することで着実に積み上げることができます。また、節税を意識しすぎて利益を過度に圧縮すると平均利益額が下がりX2点が低下するリスクがあるため、税務と経審の両面を考慮した決算対策が重要です。
Y点はウエイト20%であり、登録経営状況分析機関が財務諸表をもとに算出する評点です。純支払利息比率・負債回転期間・総資本売上総利益率など複数の財務指標が評価対象となります。借入金の圧縮や売上総利益率の向上が改善につながりますが、財務体質の改善には時間がかかるため、決算前に税理士・行政書士と連携して計画的に取り組むことが大切です。
P点向上の施策は、取り組みにかかる時間軸によって優先順位を整理することが実践的です。下表のとおり、即効性の高い施策から着手し、並行して中長期的な施策を進めることが効率的なアプローチです。
| 時間軸 | 取り組み内容 | 対象項目 |
|---|---|---|
| 短期(数か月以内) | 社会保険・建退共への加入、監理技術者講習の受講 | W点・Z点 |
| 短期〜中期 | 1級資格の取得・監理技術者資格者証の取得 | Z点 |
| 中期(1〜2年) | 元請工事の受注拡大・完成工事高の積み上げ | X1点・Z点 |
| 中長期(複数年) | 借入金圧縮・利益率改善・自己資本の蓄積 | X2点・Y点 |
公共工事への参入を目指す一人親方が今すぐ取り組むべきアクションとして、①建退共や法定外労働災害補償制度への加入によるW点の加点確保、②1級資格の取得と監理技術者講習受講によるZ点の最大化、③元請工事の受注拡大によるX1点とZ2点の同時引き上げの3点が特に効果的です。この3つを軸に経審対策を進めることで、効率よくP点を向上させることができます。
P点を短期間で効率よく引き上げるためには、ウエイトが高くかつ比較的短期間で改善できるZ点とW点を最優先に取り組むことが最も効果的です。特にZ点については、1級資格の取得・監理技術者資格者証の保有・監理技術者講習の受講を組み合わせることで1人あたり最高6点の評価を得ることができ、P点への波及効果が非常に大きくなります。W点については社会保険への加入・建退共への加入といった取り組みを早期に完了させ、減点要素をなくすことが第一歩です。中長期的にはX1点の拡大とX2点・Y点の財務改善を並行して進めることで、継続的なP点向上が実現できます。経審対策は複合的な判断が必要ですので、ぜひ行政書士にご相談ください。