経審では、審査基準日という概念が非常に重要です。審査基準日とは、経審の申請において基準となる日のことを指し、原則として申請者の直前の事業年度の終了日(=決算日)がこれにあたります。つまり、経審を申請する時点で最も直近に終了した決算期の最終日が、審査基準日となります。
審査基準日は、完成工事高の集計期間や財務諸表の取得対象期間を決定する起点となります。この日を正確に把握しておかないと、使用すべき財務諸表の期間を誤ったり、申請の有効期限を見誤ったりする原因になります。また、経審の結果として交付される経営規模等評価結果通知書の有効期間は、審査基準日から1年7ヶ月と定められているため、公共工事の入札参加資格を維持するためにも、審査基準日の管理は極めて重要です。
経審で使用する財務諸表は、原則として審査基準日を含む直前1事業年度分です。具体的には、直前の決算期に係る貸借対照表・損益計算書・完成工事原価報告書などが対象となります。個人事業主(一人親方)の場合は、税務署に提出した確定申告書の内容を基に、経審用の財務諸表を作成・整理することになります。
X2点(経営規模評点)は、自己資本額点数(X21)と平均利益額点数(X22)の平均値で算出されます。自己資本額は、貸借対照表の純資産合計をもとに、基準決算(直前1期)または直前2期平均のいずれか有利な方を申請者が選択できます。一方、平均利益額は、「営業利益+減価償却実施額」で求められる利払前税引前償却前利益を直前2期分で平均した値が使用されます。そのため、X2点の評価には直前1期だけでなく、複数期の財務内容が影響することを理解しておく必要があります。
経審における完成工事高(X1点)の評価は、直前1期分ではなく、2期平均または3期平均のいずれかを選択して算出します。これは申請者が自由に選択できる制度であり、どちらを選ぶかによってスコアが大きく変わる場合があります。
| 項目 | 2期平均 | 3期平均 |
|---|---|---|
| 対象期間 | 直前2事業年度 | 直前3事業年度 |
| 有利なケース | 近年の売上が増加傾向にある場合 | 過去に高売上があり近年やや低下している場合 |
| 不利なケース | 過去に高売上があり近年落ち込んでいる場合 | 直近の売上が大幅に伸びている場合 |
| 必要な決算期数 | 最低2期分 | 最低3期分 |
どちらが有利かは事業者ごとの売上推移によって異なりますので、申請前に行政書士や税理士と相談のうえ、シミュレーションを行うことをお勧めします。
法人の場合は法人税申告書および決算書がそのまま財務諸表の根拠書類となりますが、個人事業主の場合は所得税の確定申告書(青色申告決算書)が基礎資料となります。ただし、確定申告書の様式は経審用財務諸表の様式と異なるため、確定申告書の内容をもとに、経審専用の財務諸表(貸借対照表・損益計算書等)を別途作成する必要があります。
個人事業主の場合、事業用資産と個人資産が混在しているケースがあります。経審用の貸借対照表を作成する際には、事業用として使用している資産・負債のみを計上することが求められます。また、個人事業主には「資本金」という概念がないため、自己資本額の算出方法も法人とは異なります。この点は専門家のサポートを受けることが強く推奨されます。
途中で決算期を変更した結果、12ヶ月未満の事業年度が生じることがあります。この場合、完成工事高は単純な年換算ではなく、複数の決算期をまたいで月数按分・合算する方法で計算します。具体的には、12ヶ月未満の短い期の完成工事高に、その前の期の完成工事高を不足する月数分だけ按分した金額を合算することで、審査に必要な12ヶ月相当の完成工事高を算出します。単純に「÷実際の月数×12」で求めるわけではないため、計算方法を誤らないよう注意が必要です。
決算期の変更直後は、按分・合算の計算が複数期にまたがるため、書類作成が複雑になりやすく、工事台帳や請求書の整理が不十分だと正確な完成工事高の算出が困難になります。経審のスコアへの影響を最小限に抑えるためにも、決算期の変更を検討している場合は、事前に行政書士に相談することをお勧めします。
経審の申請に法律上の期限はありませんが、経審結果通知書の有効期間は審査基準日(決算日)から1年7ヶ月と定められており、この有効期間が切れる前に次の審査を受けなければ公共工事を受注できなくなります。実務上は、決算確定から申告・納税・財務諸表の整理までに数ヶ月を要するため、決算後2〜4ヶ月後を目安に申請準備を開始するのが一般的です。
公共工事の入札参加資格申請には有効な経審結果通知書が必要です。資格の更新スケジュールから逆算して、遅くとも審査基準日から8〜10ヶ月以内には経審申請を完了させることが理想的です。申請が遅れると、入札参加資格が失効する期間が生じてしまう可能性があるため、スケジュール管理は非常に重要です。
確定申告書や決算書は税理士が作成しますが、それをもとに経審用の財務諸表を作成・整理する作業は、行政書士が担うことが多いです。ただし、数字の根拠確認や科目の振り替えなど、会計的な判断が必要な場面では税理士との連携が不可欠です。特に個人事業主の場合は、事業用・家事用の資産区分の整理など、税理士にしか判断できない事項も含まれます。
税理士との連携をスムーズに進めるために、以下の書類を事前に整理しておくことをお勧めします。
| 書類名 | 用途 |
|---|---|
| 確定申告書(直前2〜3期分) | 完成工事高・財務諸表の根拠 |
| 青色申告決算書 | 損益・貸借内容の確認 |
| 工事台帳・請求書控え | 完成工事高の内訳確認 |
| 固定資産台帳 | 貸借対照表上の資産計上 |
| 借入金残高証明書 | 負債額の確認 |
「経審には直近の決算書を出せばよい」と考えている方は多いですが、これは財務諸表(貸借対照表等)については正しく、完成工事高については必ずしも正しくありません。完成工事高は2期または3期の平均で計算されるため、複数期分の売上データが必要になります。この違いを理解していないと、書類収集の段階で後手に回ることがあります。
経審の申請には、確定した決算内容(申告済みの数値)しか使用できません。まだ申告が完了していない直近期の数字を先取りして使うことはできないため、申告スケジュールと経審申請のタイミングを合わせることが重要です。
経審の審査基準日は直前の決算日が基準となりますが、評点算出に必要な財務諸表は原則として直前2期分(以上)になります。平均利益額(X22)の算出には直前2期分が必須であり、初回申請時には3期分の財務諸表の提出を求められるケースもあります。また、完成工事高の評価については2期平均または3期平均を選択することができ、どちらが有利かは各事業者の売上推移によって異なります。個人事業主(一人親方)の場合は、確定申告書をもとに経審専用の財務諸表を別途作成する必要があり、税理士と行政書士の連携が欠かせません。決算期の変更や申請タイミングのズレがスコアや入札資格に影響することもあるため、早めに専門家へ相談されることをお勧めします。
| 評点項目 | 使用する期数 | 内容 |
|---|---|---|
| X1点(完成工事高) | 直前2期または3期 | 申請者が選択 |
| X2点(自己資本額) | 直前1期または2期平均 | 申請者が選択 |
| X2点(平均利益額) | 直前2期(固定) | 選択不可 |
| Y点(経営状況) | 直前2期分の財務諸表 | 2期平均で算出される指標を含む |
| 書類提出 | 初回申請は3期分が必要 | CIICなど各分析機関の規定による |