完成工事高の計算は消費税込みでするべきか、税抜きかを解説!
完成工事高の消費税処理は、課税事業者なら税抜き、免税事業者なら税込みが原則です。インボイス登録の有無による違いや、税込経理時の換算方法、申請時に誤りやすい注意点を解説しています。

完成工事高の計算は消費税込みでするべきか、税抜きかを解説!

1|そもそも「完成工事高」とは何か

完成工事高の定義:

 完成工事高とは、建設業者がある事業年度中に完成・引渡しを行った工事の請負金額の合計額を指します。経営事項審査(以下「経審」)においては、この完成工事高X1点(工事種類別年間平均完成工事高)の算出基礎となり、総合評定値(P点)に大きく影響する重要な指標です。


経審における完成工事高の役割:

 経審では、完成工事高の多寡がスコアに直結するため、正確な金額の計上が求められます。完成工事高が高いほどX1点が上昇し、公共工事の入札において有利な立場を得ることができます。一人親方の職人が建設業許可を取得して公共工事に参入する際には、この数値が将来の受注機会を左右するといっても過言ではありません。


2|消費税の取り扱いに関する原則ルール

課税事業者は「税抜き」が原則:

 経審において、消費税の課税事業者完成工事高税抜き(消費税額を除いた金額)で計上することが原則とされています。これは、建設業法施行規則に基づく財務諸表の作成基準において、課税事業者については税抜経理方式による計上が求められているためです。たとえば、請負金額が1,100万円(消費税10%込み)の工事であれば、完成工事高として計上する金額は1,000万円(税抜き)となります。


免税事業者は「税込み」での計上が認められる:

 一方、消費税の免税事業者については、税込みの金額をそのまま完成工事高として計上することが認められています。免税事業者は消費税を納税する義務がなく、受け取った消費税相当額も含めた金額が実質的な売上となるため、税込み計上が適切とされています。

3|課税事業者・免税事業者の区別と判断基準

消費税の課税・免税の判断基準:

 課税事業者か免税事業者かは、原則として基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかによって判定されます。1,000万円を超えれば課税事業者、1,000万円以下であれば免税事業者となります(ただし、特定期間の判定や課税事業者の選択届出など、例外規定もあります)。


インボイス制度導入後の注意点:

 2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入により、状況が変わっています。インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)として登録した事業者は、たとえ売上高が1,000万円以下であっても課税事業者とみなされ、経審においては税抜きでの計上が必要となります。一人親方の方でインボイス登録をしている場合は、この点に特に注意が必要です。

事業者区分 完成工事高の計上方法 備考
課税事業者  税抜き 消費税を除いた請負金額を計上
免税事業者(インボイス未登録)  税込み 受取額そのままを計上
インボイス登録事業者(売上1,000万円以下)  税抜き 課税事業者とみなされるため税抜き

4|税抜き計上と税込み計上の具体的な計算例

課税事業者の計算例:

 課税事業者である一人親方が、ある事業年度中に以下の工事を完成・引渡した場合を例として考えます。

工事名 請負金額(税込み) 消費税額 完成工事高(税抜き)
A工事 1,100万円 100万円 1,000万円
B工事 550万円 50万円 500万円
C工事 330万円 30万円 300万円
合計 1,980万円 180万円 1,800万円

 この場合、経審に申告する完成工事高は税抜きの合計額である1,800万円となります。


免税事業者の計算例:

 免税事業者(インボイス未登録)の場合、同じ工事実績であれば税込みの合計額である1,980万円がそのまま完成工事高として計上されます。
 この差額(180万円)が経審X1点の算出に影響するため、事業者区分の正確な把握が重要です。

5|経理方式(税込経理・税抜経理)との関係

税込経理方式と税抜経理方式の違い:

 日常の会計処理においては、税込経理方式と税抜経理方式の2種類があります。税込経理方式とは、消費税を含んだ金額で売上や費用を帳簿に記録する方法です。税抜経理方式とは、消費税を除いた金額で記録し、消費税分を仮受消費税・仮払消費税として別途管理する方法です。


経審での取り扱いとの整合性:

経理方式 帳簿の記録 経審での完成工事高
税込経理方式(課税事業者)  税込み金額で記録 税抜きに換算して申告が必要
税抜経理方式(課税事業者)  税抜き金額で記録 そのまま申告可能
免税事業者  税込み金額で記録 税込みのまま申告可能

 課税事業者が税込経理方式を採用している場合、決算書上の売上高(完成工事高)は消費税込みの金額で記載されているため、経審用の財務諸表に転記する際に税抜き換算の作業が必要となります。この換算作業を怠ると、完成工事高が過大計上となり、虚偽申請のリスクが生じるため注意が必要です。

6|財務諸表作成時の実務的な注意点

経審専用財務諸表への転記時の確認事項:

 個人事業主(一人親方)の場合、確定申告書(青色申告決算書)をもとに経審専用の財務諸表を作成します。その際、青色申告決算書の「売上(収入)金額」欄が税込みで記載されている場合は、課税事業者であれば必ず税抜き換算を行う必要があります。換算の方法は、税込み金額を1.1(消費税率10%の場合)で除した金額が税抜き金額となります。

税抜き完成工事高 = 税込み請負金額 / 1.1


消費税の確定申告書の活用:

 消費税の課税売上高は、消費税の確定申告書(付表2または付表5)に記載されている「課税標準額」を参照することで確認できます。税理士に確定申告を依頼している場合は、消費税申告書も含めて提供してもらい、行政書士と連携して経審用財務諸表を正確に作成することが重要です。


7|兼業事業売上高の消費税の取り扱い

兼業事業売上高とは:

 建設工事以外の事業(たとえば資材販売・除草作業・運搬業など)による売上は、兼業事業売上高として完成工事高とは別に計上されます。経審の評点算出においては、完成工事高のみが評価対象となり、兼業事業売上高はX1点の算出には含まれません。


兼業事業売上高の消費税の取り扱い:

 兼業事業売上高についても、完成工事高と同様に、課税事業者は税抜き、免税事業者は税込みでの計上が基本となります。建設工事と兼業事業の両方を手がけている事業者は、それぞれの売上を正確に区分し、消費税の取り扱いを統一して処理することが求められます。


8|よくある誤りとそのリスク

「税込みで申告してしまった」ケース:

 課税事業者であるにもかかわらず、誤って税込みの金額を完成工事高として申告してしまうケースが実務上見受けられます。この場合、完成工事高が実際より高く計上されることになり、虚偽の申請(不正申告)とみなされるリスクがあります。経審における虚偽申請は、建設業法違反として許可の取消しや指示・営業停止処分の対象となることがあるため、厳に慎まなければなりません。


インボイス登録後に税込みのまま申告してしまったケース:

 インボイス登録事業者(適格請求書発行事業者)となった後も、従来の免税事業者時代の感覚で税込みのまま完成工事高を計上してしまうケースも散見されます。インボイス登録を行った時点から課税事業者として扱われるため、登録後の事業年度分については必ず税抜き計上に切り替えることが必要です。税理士や行政書士との連携を通じて、切り替えのタイミングを確認しておくことをお勧めします。

9|税理士・行政書士との連携ポイント

税理士に確認すべき事項:

 消費税の取り扱いに関しては、税理士との連携が不可欠です。事前に確認しておくべき主な事項は次のとおりです。

  • 自分が課税事業者か免税事業者かの確認
  • インボイス登録の有無と登録日
  • 確定申告書の売上高が税込みか税抜きかの確認
  • 税込経理方式を採用している場合の税抜き換算金額


行政書士に依頼すべき作業:

 経審専用の財務諸表への転記・換算作業は、行政書士が担うことが多い業務です。特に課税事業者で税込経理方式を採用している場合は、税抜き換算の正確性が経審のスコアに直結するため、専門家に依頼することを強くお勧めします。税理士が作成した確定申告書・消費税申告書の内容を行政書士に共有し、双方が連携して正確な財務諸表を作成する体制を整えることが理想的です。


まとめ:課税・免税の区分を正確に把握し、正しい消費税処理を

 経審における完成工事高の消費税の取り扱いは、課税事業者は税抜き、免税事業者は税込みが原則です。また、インボイス制度の導入により、売上高が1,000万円以下であってもインボイス登録事業者は課税事業者として扱われ、税抜き計上が必要となります。課税事業者が税込みのまま申告してしまうと、完成工事高の過大計上による虚偽申請のリスクが生じるため、税理士・行政書士との連携のもと、正確な消費税処理を行うことが不可欠です。消費税の取り扱いを誤らないためにも、経審申請の前に自身の事業者区分とインボイス登録の有無を必ず確認するようにしてください。