電気工事業を営むためには、「電気工事業の業務の適正化に関する法律(電気工事業法)」に基づき、必ず所定の手続きを完了させなければなりません。この手続きには「登録」「通知」「届出」の3種類があり、それぞれの手続きは事業者の置かれた状況によって異なります。具体的には、「建設業許可を持っているかどうか」と「どの種類の電気工作物の工事を行うか」という2つの軸によって、自社に必要な手続きが決まる仕組みになっています。この3つの手続きの違いを正確に理解することは、適法に電気工事業を営むための出発点となります。
まず、手続きの区分を理解するうえで欠かせない基礎知識として、電気工作物の種類を把握しておく必要があります。電気工事業法の対象となる電気工作物は、大きく「一般用電気工作物等」と「自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)」の2種類に分けられます。一般用電気工作物等とは、一般住宅や小規模店舗など600V以下で受電する施設の屋内配線設備等のことであり、自家用電気工作物とは中小ビルや工場などの受電設備・構内電線路・負荷設備等を指します。
この2種類の電気工作物のどちらを取り扱うかという点と、建設業許可の有無を組み合わせることで、必要な手続きが「登録」「通知」「届出」のいずれかに定まります。
電気工事業者は法律上4つの区分に分類されており、それぞれに対応する手続きが異なります。以下の表で全体像を確認してください。
| 工事の対象 | 建設業許可の有無 | 事業者の区分 | 必要な手続き |
|---|---|---|---|
|
一般用電気工作物等のみ、 |
なし | 登録電気工事業者 | 登録 |
| あり | みなし登録電気工事業者 | 届出 | |
| 自家用電気工作物のみ | なし | 通知電気工事業者 | 通知 |
| あり | みなし通知電気工事業者 | 通知 |
なお、愛知県のQ&A(消防保安課産業保安室)によれば、「届出」が必要となるみなし登録電気工事業者の区分については、建設業許可の業種は電気工事業に限らず、いずれの業種であっても電気工事業を自ら施工する場合は届出が必要とされています。この点は後述する「届出」の解説であらためて整理します。
「登録」は、建設業許可を持たない事業者が一般用電気工作物等の工事を行う場合に必要な手続きです。独立開業したばかりで建設業許可を取得していない職人の方が、一般住宅や店舗の電気工事を請け負う場合は、この「登録」の手続きが必要となります。
登録にあたっては、以下の2つの要件を満たさなければなりません。第一の要件は「主任電気工事士の設置」であり、営業所ごとに第1種電気工事士、または第2種電気工事士免状の交付後に登録電気工事業者のもとで3年以上の実務経験を積んだ者を配置する必要があります。一人親方として独立する場合は、本人がこの要件を満たしていれば自らが主任電気工事士を兼ねることができます。第二の要件は「法定備付器具の配備」であり、一般用電気工作物等のみを取り扱う場合は絶縁抵抗計・接地抵抗計・回路計の3種類を営業所ごとに備えておく必要があります。
登録の有効期間は5年間であり、期間満了後も引き続き事業を営む場合は更新手続きが必要です。登録申請には手数料がかかり、申請先は営業所が1つの都道府県内にある場合は都道府県知事、2つ以上の都道府県にまたがる場合は経済産業大臣(産業保安監督部)となります。
なお、ここでいう「営業所」とは、電気工事の施工管理(測定器具や図面類の管理など)を実際に行う拠点のことを指します。契約の締結や経営の管理のみを行う事務所は、ここでいう「営業所」には該当しません(経産省近畿支部)。
「通知」は、建設業許可を持たない事業者が自家用電気工作物のみの工事を行う場合に必要な手続きです。一般住宅の工事は行わず、中小ビルや工場の受電設備等の工事に特化して事業を行う場合がこれに該当します。
「登録」との最も大きな違いは、「主任電気工事士の設置が不要」である点です(電気工事業法第19条第1項)。「通知」の場合は法定備付器具を営業所ごとに備えることが主たる要件となります。ただし、自家用電気工作物を取り扱う性質上、必要な器具の種類は「登録」の場合より多く、絶縁抵抗計・接地抵抗計・回路計に加えて、低圧検電器・高圧検電器・継電器試験装置・絶縁耐力試験装置の計7種類が必要となります。
また、「通知」については登録のような有効期間の更新制度はありませんが、事業を開始する前に所定の通知手続きを行うことが義務付けられており、通知をせずに事業を開始した場合は罰則の対象となります。
「届出」は、建設業許可を取得している事業者が電気工事業を営む場合に必要な手続きです。建設業許可を持つ事業者は「みなし登録電気工事業者」または「みなし通知電気工事業者」として扱われ、改めて「登録」の手続きを経ることなく電気工事業を行うことができます。ただし、「手続き不要」ではなく、電気工事業を開始する際に「電気工事業開始届出書」を遅滞なく提出することが義務付けられています。この届出を怠ることは法令違反となります。
ここで特に注意が必要な点を2つ指摘しておきます。1点目は、愛知県の公式Q&Aが明記しているとおり、届出が必要となる「建設業許可」は業種を問いません。電気工事業以外の建設業許可(例えば管工事業など)を取得している場合であっても、自ら電気工事を施工するのであれば届出が必要です。2点目は、建設業許可が失効した場合はみなし登録も同時に失効するという点です。その場合は改めて登録電気工事業者としての登録手続きが必要となります。
「登録」「通知」「届出」それぞれに必要な要件を横並びで比較すると、以下のとおりです。
| 比較項目 | 登録 | 通知 | 届出(みなし登録) |
|---|---|---|---|
| 建設業許可 | 不要 | 不要 | 必要 |
| 主任電気工事士 | 必要 | 不要 | 必要 |
| 法定備付器具 | 必要(3or7種類) | 必要(7種類) | 必要(3or7種類) |
| 登録手数料 | 22,000円 | なし | なし |
| 有効期間・更新 | 5年ごとに更新 | 更新制度なし | 建設業許可の更新に連動 |
| 対象工事 | 一般用+自家用 | 自家用のみ | 一般用+自家用 |
「登録」「通知」「届出」のいずれかが必要であるにもかかわらず、これを行わずに電気工事業を営んだ場合は罰則の対象となります。具体的には、登録を受けずに電気工事業を営んだ場合は1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金、通知をせずに自家用電気工作物の電気工事業を営んだ場合は2万円以下の罰金が定められています。また、登録事項に変更が生じたにもかかわらず変更届を怠った場合も、同様に罰則の対象となります。開業前に正しい手続きを完了させることが、安心して事業をスタートするための最低限の条件です。
「登録」「通知」「届出」の3つの手続きは、建設業許可の有無と請け負う工事の種類によって区分されています。建設業許可を持たずに一般住宅等の工事を行う場合は「登録」、自家用電気工作物のみの工事を行う場合は「通知」、建設業許可を保有している場合は「届出」がそれぞれ必要です。いずれの手続きも、開業前または電気工事業開始前に完了させることが法律上の義務であり、怠った場合は罰則の対象となります。自社の状況がいずれの区分に該当するかを正確に判断するためには、専門家である行政書士に相談することをお勧めします。