許可がない場合の電気工事業の起こし方解説!
建設業許可がない状態で電気工事業を始める場合に必要な登録・通知の違いや、主任電気工事士の要件、法定備付器具、申請先、無手続で営業した場合のリスクまで解説しています。

許可がない場合の電気工事業の起こし方解説!

建設業許可がない場合に電気工事業を始める前に

 電気工事業を営む場合、建設業許可の有無にかかわらず、「電気工事業の業務の適正化に関する法律(電気工事業法)」に基づく所定の手続きが必ず必要です。ここで重要なのは、「500万円未満の工事なら何もしなくてよい」という認識は誤りであるという点です。建設業法では500万円未満の工事に建設業許可は不要ですが、電気工事業法は工事の請負金額を問わず、電気工事を事業として行うすべての者に手続きを義務付けています(電気工事業法第3条第17条の2第34条)。建設業許可を持っていない場合に必要な手続きは、「登録」と「通知」の2種類であり、どちらが必要かは請け負う工事の対象となる電気工作物の種類によって決まります。


2種類の手続きを分ける「電気工作物の種類」とは

 建設業許可を持たない事業者が必要な手続き(「登録」か「通知」か)を判断するうえで、まず理解しなければならないのが「一般用電気工作物等」と「自家用電気工作物」の違いです。


 一般用電気工作物等とは、主に一般住宅・コンビニエンスストア・小規模店舗など、600V以下で受電する施設の屋内配線設備等のことです。家庭のコンセントや照明配線工事などがこれに該当します。


 一方、自家用電気工作物とは、工場・中小ビル・病院などに設置される受電設備・構内電線路・負荷設備等のことを指し、電気工事業法上は「最大電力500kW未満の需要設備」に限定されます。これを超える規模(最大電力500kW以上)の設備は電気工事業法の適用外となります。


「登録」が必要なのはどのような場合か

 建設業許可を持っていない事業者が、一般用電気工作物等の工事を行う場合、または一般用電気工作物等と自家用電気工作物の両方を行う場合は、「登録電気工事業者としての「登録」の手続きが必要です。一般住宅や店舗の電気工事をメインに独立開業する場合は、この「登録」の手続きが必要となります。


 登録を受けるためには、主に以下の2つの要件を満たさなければなりません。第一に「主任電気工事士の設置」、第二に「法定備付器具の配備」です。いずれも営業所ごとに満たす必要があります。一人親方として独立する場合は、本人が主任電気工事士の要件を満たしていれば、自らがその役割を担うことができます。

「通知」が必要なのはどのような場合か

 建設業許可を持っていない事業者が、自家用電気工作物のみの工事を行う場合は、「通知電気工事業者」としての「通知」の手続きが必要です。一般住宅の工事は一切行わず、工場やビルの受電設備工事のみに特化して事業を行う場合がこれに該当します。


 「登録」との最大の違いは、「通知」の場合は「主任電気工事士の設置義務がない」点です。ただし、法定備付器具については「登録」の場合より多い7種類が必要となります。「通知」はハードルが低いように見えますが、将来的に一般住宅の工事も受ける可能性があるならば、最初から「登録」の手続きを選択することが実務上のポイントとなります。


「登録」と「通知」の要件比較

 2つの手続きの違いを以下の表で確認してください。

比較項目 登録(登録電気工事業者) 通知(通知電気工事業者)
対象工事  一般用のみ、または一般用+自家用 自家用電気工作物のみ
建設業許可  不要 不要
主任電気工事士  必要(営業所ごと) 不要
法定備付器具  3種類(一般用のみの場合) 7種類
申請手数料  22,000円 なし
有効期間・更新  5年ごとに更新が必要 更新制度なし

「登録」に必要な主任電気工事士の要件

 「登録」手続きにおいて最も重要な要件が「主任電気工事士の設置」です(電気工事業法第19条)。主任電気工事士になれるのは、以下のいずれかに該当する者に限られます。

  • 第1種電気工事士の免状を取得している者(実務経験不要)
  • 第2種電気工事士の免状交付後、登録電気工事業者等のもとで3年以上の実務経験を積んだ者

 ここで実務上の注意点があります。第2種電気工事士の「3年」のカウントは、必ず「免状の交付を受けた後」の経験に限られます。免状取得前の見習い期間の経験は一切カウントされません。また、この実務経験を証明するためには、過去に勤務していた登録電気工事業者等から「実務経験証明書」への記名・押印をもらう必要があります。円満に退職していない場合など、この証明書の取得に苦労するケースも少なくないため、独立前から計画的に準備しておくことが重要です。


「登録」に必要な法定備付器具

 営業所ごとに備え付けが義務付けられている器具は、取り扱う電気工作物の種類によって異なります。

取り扱う工作物 必要な器具
一般用電気工作物等のみ  絶縁抵抗計・接地抵抗計・回路計(3種類)
一般用+自家用電気工作物の両方  上記3種類+低圧検電器・高圧検電器・継電器試験装置・絶縁耐力試験装置(計7種類)

 なお、継電器試験装置および絶縁耐力試験装置については、必ずしも購入する必要はなく、必要な時に使用できる賃貸借契約を締結していることで要件を満たすことができます。申請の際には器具のメーカー名・型式・製造番号等を申請書に記載することが求められますので、器具の準備は早めに進めておくことをお勧めします。

申請先と手続きの流れ

 「登録」の申請先は、営業所の所在地によって異なります。営業所が1つの都道府県内のみにある場合は「都道府県知事」、2つ以上の都道府県にまたがる場合は「経済産業大臣(産業保安監督部)」への申請となります。判断基準はあくまで「営業所の所在地」であり、工事を行う地域ではない点に注意が必要です。


 申請書類が受理されてから登録証が届くまでの標準処理期間は、都道府県によって異なりますが、概ね1か月程度が目安です。書類の不備があると審査が遅れるため、申請前に必要書類を漏れなく揃えることが重要です。また、「登録」には有効期間があり、5年ごとに更新手続きが必要です。更新を怠ると登録が失効し、電気工事業を継続できなくなりますので、期限の管理も怠らないようにしてください。


手続きをせずに工事を行った場合の罰則

 「登録」または「通知」の手続きを行わずに電気工事業を営んだ場合、電気工事業法上の罰則が適用されます。登録を受けずに営業した場合は「1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」、通知を行わずに自家用電気工作物の工事を行った場合は「2万円以下の罰金」が定められています。また、近年は元請業者がコンプライアンスを厳しくチェックする傾向にあり、登録・通知がなければ現場への入場を断られるケースも増えています。罰則を避けるためだけでなく、事業継続のためにも、開業前に正しい手続きを完了させることは必須です。


まとめ

 建設業許可を持っていない場合に必要な電気工事業の手続きは、「登録」と「通知」の2種類です。一般用電気工作物等の工事を行う場合(または一般用と自家用の両方を行う場合)は「登録」、自家用電気工作物のみを行う場合は「通知」が必要となります。「登録」には主任電気工事士の設置・法定備付器具の配備という2つの要件があり、主任電気工事士の実務経験証明は準備に時間がかかる場合もあります。開業スケジュールに余裕をもって準備を進めるためにも、早い段階で専門の行政書士にご相談されることをお勧めします