建設業許可を取得している場合、電気工事業法上の「登録」は不要です。建設業許可を有する事業者は、電気工事業法により「登録を受けた登録電気工事業者とみなされる」扱いとなるためです。これが「みなし登録電気工事業者」と呼ばれる制度です。
しかし、「登録不要=何もしなくてよい」ではありません。建設業許可を取得して電気工事業を開始する際には、「電気工事業開始届出書」を遅滞なく提出することが電気工事業法上の義務として課せられています。この届出を怠った場合は法令違反となりますので、許可取得後の手続きとして必ず行う必要があります。
電気工事業法は、電気工事業を営む者について登録等の制度や主任電気工事士の設置義務などを定めることで、一般用電気工作物等および自家用電気工作物の保安確保を図る法律です。
一般用電気工作物等に係る電気工事業については、原則として登録が必要ですが、建設業法上の建設業者が電気工事業を営む場合には、登録に代えて開始の届出を行う特例があり、これが一般に「みなし登録電気工事業者」と呼ばれるものです(電気工事業法第34条、規則第24条、建設業法第2条第3項)。
したがって、建設業者はあらためて通常の登録申請をする必要はありませんが、何もしなくてよいわけではなく、電気工事業の開始について所定の届出が必要です。なお、みなし登録は登録申請ではないため、通常の登録手数料は不要です。
両者の主な違いを以下の表で整理します。
| 比較項目 | 登録電気工事業者 | みなし登録電気工事業者 |
|---|---|---|
| 建設業許可(電気工事業) | 不要 | 必要 |
| 手続きの種類 | 登録申請 | 届出 |
| 登録・届出の手数料 | あり(約22,000円) | なし |
| 有効期間・更新 | 5年ごとに更新が必要 | 建設業許可の有効期限に連動 |
| 主任電気工事士の設置 | 必要 | 必要 |
| 法定備付器具の配備 | 必要 | 必要 |
| 電気工事業開始届出書の提出 | 不要 | 必要(遅滞なく) |
この表からもわかるとおり、両者は「手続きの種類」と「手数料の有無」が主に異なりますが、主任電気工事士の設置や法定備付器具の配備といった実体的な要件は共通して求められます。
みなし登録電気工事業者としての届出に必要な主な書類は以下のとおりです。なお、都道府県によって追加書類が求められる場合があるため、事前に管轄窓口で確認することをお勧めします。
鹿児島県では、備付器具調書や営業所の位置図の添付は求めていない(R8.3.24現在)。
届出の提出先は、電気工事の「営業所の所在地」によって異なります。営業所が1つの都道府県内にのみある場合は「都道府県知事」、2つ以上の都道府県にまたがる場合は「産業保安監督部または経済産業大臣」への届出となります。ここで注意が必要なのは、提出先の判断基準は「建設業許可の申請先(大臣か知事か)」ではなく、あくまで「電気工事業法上の営業所の所在地」であるという点です(電気工事業法第3条、第19条、経済産業省)。
届出先の判断において特に注意が必要なのが、「建設業許可上の営業所」と「電気工事業法上の営業所」の定義が異なるという点です。
建設業許可上の営業所は、建設工事の請負契約(見積・入札・契約締結など)を行う拠点を指します。一方、電気工事業法上の営業所は、「電気工事の施工管理を行い、主任電気工事士が常駐し、法定備付器具が備え付けられている拠点」を指します。契約の締結や経営管理のみを行い、技術者が常駐していない事務所は電気工事業法上の「営業所」には該当しません。
例えば、建設業許可を大臣許可で取得していても、電気工事の施工管理を行う拠点(主任電気工事士を置く営業所)が1つの都道府県内にしかない場合は、届出先は都道府県知事となります。この判断を誤ると手続きのやり直しが発生しますので、注意が必要です。
みなし登録の手続きにおいて、事業者が特に混乱しやすいのが「主任電気工事士」と建設業許可における「専任技術者(営業所技術者)」の関係です。以下の表でその違いを確認してください。
| 比較項目 | 専任技術者(建設業法) | 主任電気工事士(電気工事業法) |
|---|---|---|
| 役割 | 請負契約の技術的裏付け | 現場作業の安全・技術監督 |
| 必要資格 | 施工管理技士・技術士・電気工事士等 | 電気工事士(第1種または第2種) |
| 配置単位 | 営業所ごとに専任 | 営業所ごとに常駐 |
同一の営業所内であれば、1人の人物が専任技術者と主任電気工事士を兼務することは可能です。ただし、兼務が認められるためには、その人物が「電気工事士免状」を保有していることが絶対条件となります。施工管理技士の資格は持っているが電気工事士免状を持っていない場合は、別途、主任電気工事士を選任する必要があります。また、他の営業所との兼務や、常時現場に出ずっぱりになる現場代理人との兼務は、主任電気工事士の「営業所への常駐」という要件と矛盾するため、原則として認められません。
これまで「登録電気工事業者」として電気工事業を営んでいた事業者が、事業拡大等に伴い「建設業許可(電気工事業)」を新たに取得した場合は、手続きの切り替えが必要です。建設業者になった時点で、それまでの「登録」は電気工事業法第34条第6項により自動的に効力を失います。そのため、従来の登録の廃止手続きを行うとともに、速やかに「みなし登録電気工事業者としての開始届出」を提出する必要があります。この切り替えを怠ると、一時的に「無届営業」という法令違反状態に陥ることになります。建設業許可証が手元に届いたら、間髪を入れずにみなし登録の開始届のスケジュールを組むことが極めて重要です。
みなし登録電気工事業者の地位は、建設業許可の有効期限に連動しています。つまり、「建設業許可が失効した時点で、みなし登録電気工事業者としての地位も同時に失効する」という点を必ず理解しておく必要があります。建設業許可の更新を怠った場合、電気工事業も引き続き行うことができなくなります。許可の更新期限は5年ごとであり、期限管理を怠ることは電気工事業の継続にも直結する重大な問題です。なお、建設業許可を更新した場合は、電気工事業の開始届の効力はそのまま継続しますが、許可番号等の変更が生じる場合は変更届の提出が別途必要となります。
みなし登録電気工事業者としての届出を完了した後も、以下の事項を継続的に管理することが必要です。登録後の管理を怠ることは、法令違反や元請業者からの信用失墜、さらには損害賠償保険が適用されないリスクにつながります。届出後の維持管理として特に重要な事項は、商号・代表者・営業所・主任電気工事士等に変更が生じた際には「遅滞なく変更届」を提出すること、営業所ごとに「電気工事業者の標識を掲示」すること、「帳簿を営業所ごとに備え付け」て所定の記載事項を保存することの3点です。「届出はしたが、社内で誰も把握していない」という状態が最も危険であり、いざ行政の立入検査が行われた場合に対応できなくなります。
建設業許可を取得している場合、電気工事業の「登録」は不要です。ただし、「みなし登録電気工事業者」として「電気工事業開始届出書」を遅滞なく提出することは、法律上の義務として必ず求められます。また、既存の「登録電気工事業者」から建設業許可を取得した場合は、速やかに「みなし登録」への切り替え手続きが必要であり、これを怠ると法令違反となります。建設業許可の有効期限管理と電気工事業の届出管理は表裏一体の関係にあります。手続きの漏れや誤りを防ぐためにも、許可取得の前後を通じて、専門の行政書士にご相談されることをお勧めします。