工事対象が自家用電気工作物専門の場合の手続きを解説!
自家用電気工作物専門で電気工事業を始める場合は、登録ではなく通知手続きが必要です。通知電気工事業者の要件や備付器具、従事できる資格者、登録との違いをわかりやすく解説しています。

工事対象が自家用電気工作物専門の場合の手続きを解説!

手続きの種類は変わる — その理由

 結論から申し上げると、請け負う工事の対象が「自家用電気工作物のみ」である場合、必要な手続きの種類は変わります。電気工事業法では、事業者が行う工事の対象となる電気工作物の種類と、建設業許可の有無の2つの軸によって、必要な手続きが「登録」「通知」「届出」に分類される仕組みになっています。一般住宅等の工事も行う場合は「登録」が必要ですが、自家用電気工作物のみの工事に特化する場合は「通知」または「みなし通知」という、より簡易な手続きが適用されます。このように工事の対象によって手続きが変わる点は、独立開業にあたって事前に正確に把握しておくべき重要な知識です。


「一般用電気工作物等」と「自家用電気工作物」の違い

 手続きの違いを正しく理解するためには、まず電気工作物の種類の区分を把握しておく必要があります。経済産業省の定義によれば、「一般用電気工作物等」とは、600V以下で受電する一般家庭・商店等の屋内配線設備等のことを指します。これに対し、「自家用電気工作物」とは、電気工事士法第2条第2項に規定する電気工作物であり、概括的には大規模マンション・ビル・オフィス・工場等の設備が該当します。電気工事業法が適用される自家用電気工作物の範囲は「最大電力500kW未満の需要設備」に限定されており、最大電力500kW以上の設備(発電所・変電所等)は電気工事業法の適用外となります。


4種類の事業者区分と手続きの全体像

 電気工事業法では、事業者を4つの区分に分類しており、自家用電気工作物のみを取り扱う場合は「通知電気工事業者」または「みなし通知電気工事業者」に該当します。以下の表で全体像を確認してください。

工事の対象 建設業許可の有無 事業者の区分 必要な手続き

一般用電気工作物等のみ、
または一般用自家用の両方

なし 登録電気工事業者 登録
あり みなし登録電気工事業者 届出
自家用電気工作物のみ なし 通知電気工事業者 通知
あり みなし通知電気工事業者 通知

 自家用電気工作物のみを取り扱う場合は、建設業許可の有無にかかわらず「通知」の手続きが必要となります。ただし、建設業許可を持っているかどうかによって、提出する書類や適用される規定が異なります。

「通知電気工事業者」と「登録電気工事業者」の主な違い

 自家用電気工作物のみを取り扱う「通知電気工事業者」と、一般用電気工作物等も取り扱う「登録電気工事業者」の要件を比較すると、以下のとおりです。

比較項目 登録電気工事業者 通知電気工事業者
対象工事  一般用のみ、または一般用+自家用 自家用電気工作物のみ
建設業許可  不要 不要
主任電気工事士の設置  必要 不要
法定備付器具  3種類(一般用のみの場合) 7種類
申請手数料  22,000円 なし
有効期間・更新  5年ごとに更新が必要 更新制度なし
通知の期間  事業開始10日前までに通知

 最も大きな違いは「主任電気工事士の設置義務がない」点です。登録電気工事業者には主任電気工事士を営業所ごとに配置することが義務付けられていますが、通知電気工事業者にはこの義務がありません。独立開業したばかりで主任電気工事士の要件を満たす人材の確保が難しい場合でも、自家用電気工作物のみを取り扱うのであれば「通知」の手続きで事業を開始できます

「通知電気工事業者」に必要な法定備付器具

 主任電気工事士の設置義務がない一方で、通知電気工事業者が備えなければならない法定備付器具は「登録」の場合より多くなっています。自家用電気工作物の工事を安全に行うためには、高圧設備に対応した機器も必要となるためです。必要な7種類の器具は以下のとおりです。

  1. 絶縁抵抗計
  2. 接地抵抗計
  3. 回路計(抵抗及び交流電圧を測定できるもの)
  4. 低圧検電器
  5. 高圧検電器
  6. 継電器試験装置
  7. 絶縁耐力試験装置

 なお、継電器試験装置および絶縁耐力試験装置については、必ずしも購入する必要はなく、必要な時に使用できる措置(賃貸借契約の締結等)が講じられていれば要件を満たすことができます。これらの器具はいずれも営業所ごとに備える必要があり、複数の営業所を持つ場合は各営業所に揃えなければなりません。


自家用電気工作物の工事に従事できる資格者

 通知電気工事業者には主任電気工事士の設置義務はありませんが、自家用電気工作物の工事に実際に従事できる資格者の配置は別途必要です。自家用電気工作物の電気工事に従事できるのは、原則として「第1種電気工事士」の免状を有する者に限られます。「認定電気工事従事者」については、自家用電気工作物のうち「簡易電気工事(電圧600V以下で使用する電線路以外の電気工作物の工事)」の作業に限って従事することが認められています。第2種電気工事士の資格のみでは、自家用電気工作物の工事には原則として従事できないため注意が必要です。


「みなし通知電気工事業者」との違い

 建設業許可を取得している事業者が自家用電気工作物のみの工事を行う場合は、「みなし通知電気工事業者」として「通知」の手続きを行うことになります。「通知電気工事業者(建設業許可なし)」と「みなし通知電気工事業者(建設業許可あり)」の主な違いは以下のとおりです。

比較項目 通知電気工事業者 みなし通知電気工事業者
建設業許可 なし あり
必要な手続き 通知(事業開始10日前まで) 通知(遅滞なく)
手数料 なし なし
主任電気工事士 不要 不要
法定備付器具 7種類 7種類
有効期間 更新制度なし 建設業許可の有効期限に連動

 みなし通知電気工事業者の場合、建設業許可が失効した時点でみなし通知電気工事業者としての地位も同時に失効する点に注意が必要です。建設業許可の更新を怠った場合、自家用電気工作物の電気工事業も継続できなくなります。

「通知」の手続きで注意すべきポイント

 「通知」の手続きは「登録」に比べてシンプルですが、実務上いくつかの注意点があります。第一に、事業を開始しようとする日の10日前までに通知を完了させる必要があります。「登録」のように申請後に審査・認可を受ける手続きではなく事前通知の性格を持つものですが、この期限を守らずに事業を開始した場合は罰則の対象となります。第二に、通知後に商号・所在地・営業所等に変更が生じた場合は、速やかに変更の通知を行う必要があり、これを怠ることも罰則の対象となります。第三に、「たまに一般住宅の工事も受ける可能性がある」場合は「通知」ではなく「登録」の手続きが必要となります。将来的に事業範囲を拡大する可能性がある場合は、最初から「登録」の手続きを選択しておくことが実務上のポイントです。


手続きを誤った場合の罰則

 「通知」の手続きを怠って自家用電気工作物の電気工事業を営んだ場合、電気工事業法上の罰則として「2万円以下の罰金」が科されます。また、本来「通知」で足りる事業者が誤って「登録」が必要な工事(一般用電気工作物等の工事)まで請け負ってしまった場合は、無登録営業として「1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」という、より重い罰則の対象となります。自分が取り扱う工事の範囲を正確に把握し、適切な手続きを選択することが重要です。


まとめ

 自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)のみの工事を請け負う場合、必要な手続きは「登録」ではなく「通知」となります。建設業許可を持たない場合は「通知電気工事業者」として、建設業許可を持っている場合は「みなし通知電気工事業者」として、それぞれ所定の通知手続きを行う必要があります。「通知」は「登録」に比べて主任電気工事士の設置義務がなく手続きのハードルが低い一方、法定備付器具が7種類と多く、従事できる資格者も第1種電気工事士(または認定電気工事従事者)に限られます。また、将来的に一般住宅等の工事も受ける可能性がある場合は、最初から「登録」の手続きを検討することをお勧めします。自社の工事範囲と将来の事業計画を踏まえたうえで正しい手続きを選択するためにも、専門の行政書士にご相談ください