主任電気工事士とは?資格・条件・設置義務を解説!
主任電気工事士は資格名ではなく、一般用電気工事を行う営業所ごとに必要となる役職です。就任できる人の条件や設置義務、兼務不可などの注意点、変更時の手続きまで解説しています。

主任電気工事士とは?資格・条件・設置義務を解説!

1|主任電気工事士の基本的な定義と役割

定義: 主任電気工事士は「資格」ではなく「役職」である

 まず大きな誤解を解いておく必要があります。「主任電気工事士」という名称の資格証や免状は存在しません。これは、電気工事業法にもとづいて事業者が営業所ごとに選任する「役職」です。電気工事業法第19条では、「一般用電気工事の業務を行う営業所(特定営業所)ごとに、一般用電気工事の作業を管理させるため、一定の資格を持つ者を主任電気工事士として置かなければならない」と規定しています。言い換えれば、既存の電気工事士免状保持者の中から一定の要件を満たす者を「主任電気工事士」として選任・届出する仕組みです。したがって、新たに試験を受けて取得する性格のものではありません。


役割: 主任電気工事士の職務内容

 主任電気工事士の職務は、電気工事業法第20条第1項に定められています。同条は「主任電気工事士は、一般用電気工事による危険及び障害が発生しないように一般用電気工事の作業の管理の職務を誠実に行わなければならない」と規定しており、法令上の職務はこの一つの包括的な義務として定められています。


 具体的には、一般用電気工事の現場において工事が安全かつ適正に施工されるよう、作業全体を管理・監督することがその本質です。また、同条第2項では「一般用電気工事の作業に従事する者は、主任電気工事士がその職務を行うため必要があると認めてする指示に従わなければならない」と定められており、作業従事者への指示権限が付与されています。

2|主任電気工事士になれる資格要件

資格: 就任できるのは2種類の電気工事士に限られる

 主任電気工事士に就任できる者は、電気工事業法の規定により以下の2種類に限定されています。資格要件の違いを整理すると次のとおりです。

資格の種類 主任電気工事士への就任条件 実務経験証明書
第一種電気工事士  免状取得のみで就任可(実務経験不要) 不要
第二種電気工事士  免状交付後3年以上の電気工事実務経験が必要 必要


条件: 第二種電気工事士が就任する際の実務経験のカウント方法

 第二種電気工事士で主任電気工事士に就任する場合、注意が必要なのが「3年以上の実務経験」の起算点と証明方法です。実務経験は第二種電気工事士免状の交付を受けた日起算点となります。免状取得前にどれほど電気工事の現場経験があったとしても、その期間は算入されません。また、実務経験は同一の事業所に限らず、複数の事業所における経験を通算することが認められています。申請の際には、実務経験証明書(所定様式)を作成し、経験を証明した事業主等の署名・押印を得た上で提出する必要があります。なお、第一種電気工事士の場合は、免状を取得しているだけで実務経験の証明なく就任できるため、実務経験証明書の提出は不要です。

3|主任電気工事士の設置義務と対象となる業者

設置義務: 一般用電気工事を行う「特定営業所」には必ず設置が必要

 電気工事業法は、主任電気工事士の設置義務を負う者として「登録電気工事業者」と「みなし登録電気工事業者」の双方を対象としています。この2種類の業者についての違いは以下のとおりです。

業者の種類 概要 主任電気工事士の設置義務
登録電気工事業者  建設業許可を持たない、または電気工事業のみを営む事業者 あり(特定営業所ごと)
みなし登録電気工事業者  建設業許可(電気工事業)を保有する事業者 あり(特定営業所ごと)

 建設業許可を持っていれば主任電気工事士が不要、というのは大きな誤解です。建設業許可保有者であっても、一般用電気工事を行う営業所には主任電気工事士の配置義務が生じます。


対象営業所: 設置義務が生じる「特定営業所」とは何か

 主任電気工事士の設置が義務付けられるのは、すべての営業所ではなく「特定営業所」に限定されます。特定営業所とは、「一般用電気工作物(主として住宅・小規模店舗等)に係る電気工事の業務を行う営業所」を指します。自家用電気工作物(工場・ビル等)のみを対象とした工事を行う営業所は、特定営業所には該当しないため、設置義務の対象外となります。ただし実務上は、一般用・自家用の両方を扱う事業者がほとんどであるため、多くの営業所が特定営業所に該当するものと考えておくべきです。

4|主任電気工事士の選任にあたっての重要な注意点

専任性: 1つの営業所に1人・複数営業所の兼務は不可

 主任電気工事士の選任において最もトラブルになりやすいのが「専任性」の問題です。主任電気工事士は営業所ごとに1人を配置しなければならず、1人が複数の営業所を掛け持ちして兼務することは認められていません。たとえ営業所間の距離が近接していても、同一人物を複数営業所の主任電気工事士とすることはできない点に注意が必要です。また、主任電気工事士となる者は、当該営業所に常時勤務することが前提とされています。実態として営業所へ通勤できないような遠方に居住している者を主任電気工事士として届け出た場合、受理されないケースもあります。


雇用関係: 直接雇用が必須・外部への名義借りは違法

 主任電気工事士となる者は、事業者と直接の雇用関係にある者でなければなりません。いわゆる「名義貸し」と呼ばれる行為、すなわち外部の有資格者と形式的な契約を結んで主任電気工事士に据えることは、電気工事業法違反となります。また、派遣労働者を主任電気工事士とすることも認められていません。個人事業主の場合は事業主本人が主任電気工事士を兼任することが多く、法人の場合は役員または従業員が就任するケースが一般的です。

5|主任電気工事士の変更・拒否事由と手続き

拒否事由: 主任電気工事士になれない欠格要件

 以下の4つに該当する者は、主任電気工事士として選任することができません。(電気工事業法第6条

欠格要件 内容
① 罰金以上の刑罰  過去2年以内に電気工事関連法令に違反し、罰金以上の刑を受けた者
② 登録取消  過去2年以内に電気工事業の登録を取り消された者
③ 役員の連座  登録取消処分のあった法人の、取消日以前30日以内の役員で、取消日から2年以内の者
④ 停止中の廃止  営業停止命令を受け、停止期間中に電気工事業を廃止した者で、停止期間を経過していない者


変更手続き: 主任電気工事士が不在となった場合の対応期限

 主任電気工事士が退職・死亡・欠格事由に該当するなど、不在となる事由が生じた場合は、その事実を知った日から2週間以内に新たな主任電気工事士選任し、さらに選任の日から30日以内変更の届出を行わなければなりません。(電気工事業法第10条第19条第3項)この期限は非常に短いため、あらかじめ後任候補者を確保しておくことが実務上のリスク管理として極めて重要です。主任電気工事士が不在のまま電気工事業を継続した場合には、行政処分(事業停止命令・登録取消)や罰則の対象となりえます。(電気工事業法第28条第39条

まとめ:主任電気工事士は電気工事業登録の根幹をなす要件

 主任電気工事士は「資格」ではなく、電気工事業法にもとづき事業者が営業所ごとに選任する「役職」です。就任できるのは第一種電気工事士、または免状交付後3年以上の実務経験を持つ第二種電気工事士に限られます。設置義務は登録電気工事業者・みなし登録電気工事業者を問わず、一般用電気工事を行う特定営業所すべてに及びます。選任にあたっては「直接雇用」「営業所専任(兼務不可)」「欠格要件の非該当」という3つの条件をすべて満たす必要があります。電気工事業の登録・届出を進める際は、主任電気工事士の要件を最初に確認し、適切な人材を確保した上で手続きに臨むことが、スムーズな開業への第一歩となります。