主任電気工事士がいない場合の営業所のリスクと対策を解説!
主任電気工事士がいない営業所で一般用電気工事を続けると、罰則や事業停止、登録取消につながるおそれがあります。不在時の法的リスクと実務への影響、早めに取るべき対策を解説しています。

主任電気工事士がいない場合の営業所のリスクと対策を解説!

1|主任電気工事士の設置義務と不在が生じる典型的な場面

設置義務: 法第19条が定める「特定営業所ごとの選任義務」

 電気工事業の業務の適正化に関する法律(以下「電気工事業法」)第19条第1項は、登録電気工事業者に対し、一般用電気工事の業務を行う営業所(特定営業所)ごとに主任電気工事士を置かなければならないと定めています。この義務は、建設業許可を保有するみなし登録電気工事業者にも等しく適用されます。さらに同条第3項では、一定の事由が生じた場合に知った日から2週間以内に新たな主任電気工事士選任しなければならないとも規定されており、義務の継続性が明確に示されています。


不在の典型例: 主任電気工事士が「欠ける」状況とはどのような場合か

 経済産業省の逐条解説によれば、主任電気工事士が「欠けるに至った」(法第19条第3項第2号)場面は、退職・死亡にとどまらず、旅行・疾病その他の事故により相当期間にわたって職務を遂行できない状態も含まれます。不在が生じやすい典型的な場面を整理すると以下のとおりです。

不在の原因 主な状況
退職・転職  主任電気工事士が会社を離れた場合
死亡  主任電気工事士本人が死亡した場合
欠格事由への該当  法第6条第1項第1〜4号のいずれかに該当した場合
長期不在  疾病・事故等により相当期間職務遂行ができない場合
開業・新設  新たに特定営業所を設置したが選任していない場合

2|不在時に課される罰則(刑事上のリスク)

罰金: 法第39条第1号が定める「3万円以下の罰金」

 電気工事業法第19条第3項の規定に違反して主任電気工事士の選任をしなかった者には、同法第39条第1号により3万円以下の罰金が科されます。金額だけを見ると軽微に映るかもしれませんが、この罰金刑の前歴は、その後の登録更新や新規登録において欠格事由(法第6条第1項第1号)として機能しうる点で、事業者に与える影響は決して小さくありません。


上位罰則との関係: 行政処分命令への違反は1年以下の拘禁刑・10万円以下の罰金

 主任電気工事士の不在が行政処分(事業停止命令)に発展し、その命令に違反して事業を継続した場合は、法第36条第1項第3号により1年以下の拘禁刑もしくは10万円以下の罰金(またはその併科)というより重い罰則が適用されます。罰則の構造を整理すると以下のとおりです。

違反の内容 根拠条文 罰則
主任電気工事士を選任しなかった  法第39条第1号 3万円以下の罰金
事業停止命令に違反して営業継続  法第36条第1項第3号 1年以下の拘禁刑もしくは10万円以下の罰金(または併科)
無登録で電気工事業を営んだ  法第36条第1項第1号 1年以下の拘禁刑もしくは10万円以下の罰金(または併科)

3|不在時に発動しうる行政処分(行政上のリスク)

登録取消・事業停止: 法第28条が定める行政庁の処分権限

 電気工事業法第28条第1項は、登録電気工事業者が「第19条第3項の規定に違反したとき」(同項第3号)に該当する場合、経済産業大臣または都道府県知事が登録を取り消し、または6月以内に期間を定めてその事業の全部もしくは一部の停止を命ずることができると規定しています。行政処分には「登録取消」と「事業停止命令」の2種類があり、その選択は行政庁の裁量によります。

行政処分の種類 根拠条文 内容
登録取消  法第28条第1項 電気工事業者としての登録が失効。再登録は2年間不可
事業停止命令  法第28条第1項 6月以内の期間で事業の全部または一部が停止される


登録取消後の連鎖的リスク: 役員への「連座」と再登録制限

 登録取消処分を受けた場合、その影響は事業者本人にとどまりません。法第6条第1項第3号により、登録取消処分のあった日前30日以内にその法人の役員であった者も、取消日から2年間は新たな登録を受けることができなくなります。また、事業停止命令を受けた期間中に電気工事業を廃止した者も、その停止期間に相当する期間が経過するまでは再登録できません(同項第4号)。つまり、主任電気工事士の不在をきっかけとした法令違反は、会社全体のみならず役員個人にまで法的影響が及ぶことを認識しておく必要があります。

4|事業継続上の実務リスクと予防策

工事受注への影響: 主任電気工事士不在中の一般用電気工事は実質的に停止

 主任電気工事士が不在の特定営業所では、一般用電気工事の適法な施工管理が行えません。仮に工事を強行すれば法令違反状態となり、前述の罰則・行政処分リスクが直ちに生じます。また、建設業許可を保有する事業者(みなし登録電気工事業者)においても同様に主任電気工事士の設置義務があるため、建設業許可さえあれば問題ない、という誤認は非常に危険です。


予防策: 後任候補者の事前確保と2週間ルールの徹底

 主任電気工事士が不在となった場合、知った日から2週間以内に新たな選任を行い、その後30日以内に変更届を提出する義務があります(法第19条第3項・第10条第1項)。2週間という期限は非常に短く、実務上は以下の点を事前に準備しておくことがリスク管理の要点となります。

  • 後任候補者の確保: 要件を満たす第一種電気工事士、または免状交付後3年以上の実務経験を持つ第二種電気工事士を社内で複数名育成しておく
  • 資格取得の促進: 従業員の電気工事士資格取得を会社として積極的に支援する
  • 状況把握の体制整備: 主任電気工事士の在籍状況・欠格事由の有無を定期的に確認する体制を設ける

まとめ:主任電気工事士の不在は「登録抹消」に直結しうる最重要リスク

 主任電気工事士が不在のまま電気工事業を継続した場合のリスクは、3万円以下の罰金(法第39条第1号)という刑事罰にとどまらず、事業停止命令・登録取消という行政処分(法第28条第1項)にまで発展しうる深刻なものです。さらに登録取消となれば、2年間の再登録制限が課されるほか、法人役員への連座リスクも生じます。主任電気工事士の不在は、決して「担当者が一時的にいないだけ」という軽微な問題ではなく、事業の存続そのものを左右する最重要の法令遵守事項です。日頃から後任候補者の育成と資格取得支援に取り組み、万一の事態に備えた体制を整えておくことが、電気工事業者として最低限求められるリスク管理といえます。