建設業許可を取得するためには、営業所ごとに専任技術者を常勤で配置することが法律上の義務となっています。専任技術者とは、その業種に関する専門的な技術力を持つ者であり、請負契約の適正な履行を技術面から支える存在です。なお、2024年12月の建設業法施行規則改正により、法令上の正式名称は「営業所技術者」に変更されていますが、現在も「専任技術者」という呼称が実務では広く使われているため、本記事でも引き続きその用語を使用します。
電気工事業において特に注意すべき点は、他の業種では認められている「無資格者による10年以上の実務経験のみ」での専任技術者要件の充足が、電気工事業では原則として認められていないという点です。これは、電気工事士法の規定により、一部の軽微な工事を除いて無資格者が電気工事に従事すること自体が禁止されているためです。したがって、電気工事業での専任技術者を目指す場合には、何らかの資格の取得が前提となります。
一般建設業の電気工事業許可において、専任技術者の要件を資格のみで満たすことができる(追加の実務経験が不要な)主な資格は以下のとおりです。
| 資格名 | 根拠法令 | 実務経験の要否 |
|---|---|---|
| 1級電気工事施工管理技士 | 建設業法 | 不要 |
| 2級電気工事施工管理技士 | 建設業法 | 不要 |
| 第1種電気工事士(免状) | 電気工事士法 | 不要 |
| 登録電気工事基幹技能者 | 建設業法 | 不要 |
これらの資格を保有している方は、免状または合格証明書等を提示することで専任技術者の技術的要件を満たすことができます。
一方、資格を保有していても、免状取得後に一定期間の実務経験が求められる資格があります。それぞれの要件は以下のとおりです。
| 資格名 | 根拠法令 | 追加の実務経験 |
|---|---|---|
| 第2種電気工事士(免状) | 電気工事士法 | 免状交付後3年以上(※) |
| 電気主任技術者(第1種~第3種) | 電気事業法 | 免状交付後5年以上 |
| 建築設備士 | 建築士法 | 資格取得後1年以上 |
| 1級計装士 | 建設業法 | 資格取得後1年以上 |
※第2種電気工事士の実務経験については、原則として登録電気工事業者の事業所において常勤として施工した経験が求められます。電気工事業者登録のない事業所での経験はカウントされない場合があるため、特に注意が必要です。
電気工事業は、建設業法施行令第5条の2に定める指定建設業7業種(土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)の一つに指定されています。指定建設業における特定建設業許可の専任技術者は、「実務経験のみ」では要件を満たすことができず、必ず対応する国家資格の保有が求められます。
| 資格名 | 根拠法令 | 備考 |
|---|---|---|
| 1級電気工事施工管理技士 | 建設業法 | 特定・一般両方に対応 |
| 技術士(電気電子・総合技術監理(電気電子)) | 技術士法 | 特定・一般両方に対応 |
| 技術士(建設・総合技術監理(建設)) | 技術士法 | 特定・一般両方に対応 |
| 国土交通大臣の認定者 | 建設業法 | 個別認定 |
重要なのは、第1種電気工事士や第2種電気工事士の免状だけでは特定建設業許可の専任技術者要件を満たせないという点です。特定建設業許可の取得を目指す場合は、1級電気工事施工管理技士または技術士(電気電子・建設系)の資格が実質的に必須となります。
資格保有者がいない場合でも、指定学科を卒業し、かつ一定期間の実務経験を有する方が専任技術者となることができます(ただし、一般建設業許可に限ります)。電気工事業における指定学科は、「電気工学」または「電気通信工学」に関する学科です。卒業後に必要な実務経験の期間は以下のとおりです。
| 最終学歴 | 必要な実務経験期間 |
|---|---|
| 高校・中等教育学校卒業 | 5年以上 |
| 大学・短期大学・高等専門学校卒業 | 3年以上 |
学歴による優遇がない場合でも、電気工事業に係る建設工事の実務経験が10年以上あれば、一般建設業許可の専任技術者要件を満たすことができます。ただし、前述のとおり電気工事業では無資格者が電気工事に従事すること自体が原則禁止されているため、この「10年以上の実務経験」は、何らかの資格(第2種電気工事士等)取得後の施工経験が前提となる点に十分な注意が必要です。実務経験の証明には、工事契約書・注文書・請求書・健康保険や雇用保険の加入記録などの書類が必要となります。
一般建設業許可と特定建設業許可とでは、専任技術者に求められる資格水準が大きく異なります。下表にて改めて整理します。
| 資格名 | 一般建設業 | 特定建設業 |
|---|---|---|
| 1級電気工事施工管理技士 | ○ | ○ |
| 2級電気工事施工管理技士 | ○ | × |
| 技術士(電気電子・建設系) | ○ | ○ |
| 第1種電気工事士 | ○ | × |
| 第2種電気工事士+実務3年 | ○ | × |
| 電気主任技術者+実務5年 | ○ | × |
| 建築設備士+実務1年 | ○ | × |
| 1級計装士+実務1年 | ○ | × |
| 学歴+実務経験 | ○ | × |
| 実務経験10年以上 | ○ | × |
このように、特定建設業許可に対応できる資格は1級電気工事施工管理技士と技術士のみであり、他の資格や実務経験では特定の許可を取得することができません。将来的に大規模工事の元請を目指す事業者にとっては、1級電気工事施工管理技士の取得が重要な経営課題となります。
建設業許可(電気工事業)を取得しただけでは、自社で電気工事を施工することはできません。これは電気工事業界特有の重要なポイントです。実際に施工を行うためには、建設業許可とは別に電気工事業法に基づく登録・届出が必要です。建設業許可を保有している事業者が電気工事を自社施工する場合は、「みなし登録電気工事業者」として届出を行う必要があります。
また、施工管理技士など電気工事士以外の資格で専任技術者の要件を満たして建設業許可を取得した場合でも、実際の施工現場には第1種または第2種電気工事士を配置しなければなりません。専任技術者の要件と電気工事を施工するための要件は別物であることを、経営者・担当者ともに正確に理解しておく必要があります。
さらに、第2種電気工事士や電気主任技術者の資格で専任技術者の実務経験を証明する際にも注意が必要です。これらの資格取得後の実務経験は、電気工事業登録がなされた事業所での経験でなければ認められない場合があります。電気工事業者登録のない事業所での経験はカウントされないリスクがあるため、実務経験の積み方には十分ご注意ください。
電気工事業の建設業許可における専任技術者の資格要件を整理すると、以下のポイントが重要です。
第一に、無資格者の実務経験のみによる専任技術者の充足は原則不可であり、何らかの資格取得が前提となります。
第二に、一般建設業許可であれば2級電気工事施工管理技士・第1種電気工事士・第2種電気工事士(免状交付後3年以上)など複数の選択肢がありますが、特定建設業許可には1級電気工事施工管理技士または技術士のみが対応しています。
第三に、建設業許可の取得と電気工事業の登録・届出は別制度であり、両方の手続きを適切に行わなければ、自社での施工は行えません。
電気工事業の建設業許可取得に向けた要件確認や申請手続きは、複数の法令が絡み合うため、専門家への相談が事業者にとって最も確実な方法です。許可要件の診断から申請書類の作成まで、許認可専門の行政書士にお気軽にご相談ください。